Case Study

設計変更の転記ミスをなくす — 装置メーカーの設計データ標準化支援

Author 木村 晃一(研修講師)

今回の事例は、「設計変更のたびに手作業転記が発生し、ミスと工数に悩んでいた装置メーカー」における設計データ標準化支援です。当該企業は、CAD・BOM・図面管理の分断を解消し、設計変更を確実に反映できる体制を求めていました。当社エンジニアがこの課題を受け、標準化の優先順位づけから運用の立ち上げまでを横断して担当しています。

当初、いきなり大型ツールを導入するのではなく、品番・属性のルールづくりから着手しました。データを機械可読な形で整える道筋を先に組み立てたことで、設計変更の転記と照合にかかる工数を大きく減らしています。「変更のたびに手作業で写す」から「一度の変更が正しく波及する」状態へと切り替え、ミスの起きにくい設計プロセスを確立しました。

目次

1. 支援先企業の概要

項目内容
業種産業用装置の設計・製造
規模社員数 約50名
地域関西地方
販売形態BtoB
主な顧客製造業の設備導入部門

当該企業は、受注仕様の産業用装置を手がけています。CAD、BOM、変更履歴がそれぞれ別の場所で管理されており、設計変更の反映が手作業に依存していました。

2. 支援前の状況と課題

当該企業が抱えていた課題は、大きく3つの側面に整理できます。手作業転記によるミスと工数アップ、図面管理の属人化による無駄の発生、そして改訂版と最終版の判別がつかず誤発注する状況です。

設計変更が手作業で転記され、ミスと工数を生む

一つの設計変更が、CAD、BOM、制御仕様へ手作業で転記されていました。転記の一つが漏れれば、古い版で製造や手配が進み、後工程で誤りが表面化します。変更のたびに転記と照合の工数がかかり、しかもミスの温床になる——現場は目標量を達成できればよく、効率的に生産できたかどうかは本件があるまで正確に把握していないかったのが現状であり、多くの無駄な発注や手戻りが発生していました。

図面管理がファイルサーバー任せになっている

図面やモデルの版管理は、ファイルサーバー頼みで、最新版がどれかを個人が判断している状態では、誤った版を参照するリスクが常態化していました。似た名前のファイルが並び、承認前後の区別も曖昧なため、探す時間と取り違えの両方が発生していましたが、日々現場の仕事に追われ、こなすことで精一杯であったため、各人問題意識があったにもかかわらず、後手に回っていました。

BOM・検証結果が設計と切り離されている

部品構成や変更履歴が設計データと別に管理され、設計変更がBOMに反映されず部品手配が食い違う、過去の変更理由がたどれず同じ検討を繰り返す、といった問題がありました。増員しても転記と照合の負荷が増えるだけで、問題の根本は人手ではなくデータの整理整頓、ルール作りにありました。こうした状況をふまえ、標準化の立ち上げを担える技術者の確保が急務となっていたのです。

3. 実施した設計データ標準化支援

機械系エンジニアが実施した支援内容は、以下の3点です。ルールづくりにとどまらず、PDM運用の立ち上げと移行までを通しで担当しました。

品番・属性のルールづくり

標準化の起点は、高機能なツールの導入ではなく、品番・属性・BOMのルールを決めることに置きました。属性やBOMのルールが曖昧なままツールを入れても定着せず、形骸化するだけで、解決しないためです。まず、どの製品でも同じ規則で品番と属性が振られる状態を作り、後続の仕組みの土台を整えました。

図面管理・BOMを設計データに結びつける

ルールが固まった後は、既存のPDM環境を活かして版管理を運用に乗せ、BOMと変更管理を設計データと結びつけました。効率的に進めるため、同エンジニアは段階を踏んでいます。まず3D CADと品番・属性を標準化して版管理をPDMに乗せ、次にBOMと変更管理を接続する流れです。

一度にすべてを統合しようとせず、データの基礎を固めてから検証や統合へ広げる順序を守ったことで、現場の負担を抑えながら移行を進められました。

移行と運用手順書の整備

既存データの移行では、品番・属性のルールに沿ってデータを整理し、当該企業の担当者と同じ手順で作業できるよう整えました。以後は社内で運用を継続できるよう、版管理・変更手続きの運用手順書も整備しています。設計者が迷わず最新版を参照でき、変更が正しく波及する状態を、当該企業の設計プロセスに組み込みました。

4. 標準化を進めるうえで工夫したこと

今回とくに意識したのは、効果の大きい工程や領域から着手して過剰投資を避けることとです。

最も高くつく領域から着手する

あらゆるデータを一気に統合しようとすると、費用も現場負荷も膨らみます。同エンジニアは、どの領域が最も高い手戻りや工数を生んでいるかを基準に着手点を決めました。当該企業は設計変更の転記が最大のボトルネックだったため、まず品番・属性の標準化と版管理から手をつけ、効果を確認しながら範囲を広げています。自社の段階に合わない投資を避けたことが、費用対効果のよい施策へとつながりました。

基礎が整う前に、AIや高度なツールを載せない

順序を飛ばして、基礎が整わないうちにシステムやAIを導入しても、再現性のある結果は得にくく、結果効果が感じられずに気づけばもとに戻っていることは往々にしてあります。当社は、まずデータと標準を固め、その上に検証や自動化を載せる順番を担当者と共有しました。

5. 成果と変化

今回の支援による成果は、転記工数の削減から社内での運用定着まで多岐にわたります。

まず、品番・属性の標準化と版管理の運用により、設計変更の転記ミスと照合工数が大きく削減されました。最新版がどれかを個人が判断する必要がなくなり、誤版参照のリスクも下がっています。

さらに、BOMと変更管理を設計データに結びつけたことで、部品手配の食い違いが減り、過去の変更理由もたどれるようになりました。標準化のルールと運用手順は体系化し、今後の拡張の土台として社内に蓄積しています。

6. このような企業におすすめ

以下のような課題を抱える企業には、本支援の活用が有効です。

  • 設計変更の転記に工数を取られ、ミスも起きている
  • 最新版がどれか分からず、誤版参照が起きている
  • PDMやBOM運用を自社の段階に合う形で立ち上げたい
  • 何から標準化すべきか優先順位を相談したい

設計データの分断を放置したまま人やツールを足しても、転記と照合の負荷が増えるだけです。まず品番・属性のルールを決め、図面管理・BOMを設計データに結びつけることが、生産性を上げる出発点になります。弊社のサービスでは、設計プロセスの実務経験を持つエンジニアが、着手の優先順位づけから運用の立ち上げまで並走します。転記に追われる状態から抜け出したい企業は、ぜひ一度ご相談ください。

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