Case Study

導入したSOLIDWORKSが定着しない——2D設計との併用から抜け出し、3D設計を根づかせた活用支援

Author 木村 晃一(研修講師)

SOLIDWORKSを導入したものの、結局は使い慣れた2D CADに戻ってしまい、3D化が進まない。そんな悩みを抱えていた部品加工メーカーが、テンプレートと設計標準の整備を通じて、3D設計を日常業務に定着させました。

本記事では、SOLIDWORKSが定着せず属人化していた企業に対し、作図ルールの統一とテンプレート整備を軸に3D設計への移行を支援した事例を紹介します。「導入したのに使われていない」状態に心当たりのある企業の参考になる内容です。導入そのものより、導入後の定着でつまずくケースは決して珍しくありません。

目次

1. 支援先企業の概要

支援先は、機械部品の設計・加工を手がける中堅メーカーです。

業種製造業(機械部品の設計・加工)
設計体制ベテランと若手が混在する設計チーム
使用CAD2D CADとSOLIDWORKSを併用
課題領域SOLIDWORKSの定着・作図ルールの統一・属人化の解消

3D化を目指してSOLIDWORKSを導入したものの、実務では2D CADが中心のまま。3Dを使う設計者と使わない設計者が分かれ、社内でデータ形式が混在していました。同じ部品でも、担当者によって2Dと3Dのどちらで作られているか分からず、探す手間も生じていました。せっかくの投資が十分に活かせていない、という点が課題でした。導入から時間が経つほど、2Dに戻る流れが固定化していく懸念もありました。

2. 支援前の状況と課題

SOLIDWORKSは導入済みでしたが、現場では3D設計が定着せず、投資が十分に活かせていない状態でした。背景には、操作以前の運用面の課題がありました。ここでは、定着を妨げていた3つの要因を整理します。

結局2D CADに戻ってしまい、3D化が進まない

最大の問題は、使う頻度が上がらず、習熟も進まないという悪循環でした。納期に追われる中で、慣れた2D CADの方が早いと感じ、SOLIDWORKSの利用が後回しになっていました。使わないから習熟しない、習熟しないからさらに使わない、という流れから抜け出せずにいたのです。導入時の意欲はあっても、日常業務の忙しさの中で3Dが選ばれない状態が続いていました。

作図の進め方が人によってばらばら

次の課題は、3Dを使う設計者の間でも共通ルールがないことでした。モデリングの手順や図面の作り方が統一されておらず、同じような部品でも作り方が異なっていました。そのため、他の人が編集しづらく、データの流用や修正に手間がかかっていました。3Dにしたのに、かえって作業が増えたと感じる場面もあり、これが2Dへ戻る一因にもなっていました。

若手が独学で、我流のまま定着しつつある

3つ目は、若手の我流が固定化しつつあることでした。若手設計者は操作を独学で覚えており、非効率なモデリングや、後で修正しにくい作り方が我流のまま身についていました。指導できる人材が社内に限られ、正しい進め方が共有されていなかったためです。放置すれば、非効率な作り方が社内標準になってしまう恐れがありました。

3. 実施したSOLIDWORKS定着・活用支援

支援は「3Dへ移行する対象の見極め」「テンプレート・設計標準の整備」「実務に沿ったモデリング教育」の3つを軸に進めました。全面移行を一度に迫るのではなく、定着しやすい範囲から着手しています。

3D化する範囲の見極めと移行方針の整理

まず、すべての設計を一度に3Dへ移すのではなく、3Dの効果が出やすい部品・工程から優先的に移行する方針を立てました。組立確認や干渉チェックが必要な部品など、3Dの利点が明確な領域から着手しています。効果を実感しやすいところから始めることで、「3Dにして良かった」という成功体験を積める形にしました。この体験が、その後の定着を後押しします。

テンプレートと設計標準の整備

次に、作図のばらつきをなくすため、社内で共通利用するテンプレートと標準を整備しました。主な整備内容は以下のとおりです。

整備項目内容
図面テンプレート図枠・表題欄・寸法設定を統一し、図面品質をそろえる
部品テンプレート単位・材質設定などの初期条件を標準化
設計標準モデリングと作図の基本的な進め方を明文化

テンプレートを整えたことで、誰が作っても一定の品質で図面が仕上がるようになり、3D設計を始める際のハードルが下がりました。ゼロから設定する手間がなくなり、着手のしやすさが定着につながっています。

実務に沿ったモデリング教育

整備した標準に沿って、実際の部品を題材にモデリングの進め方を教育しました。単なる操作説明ではなく、修正に強く流用しやすいモデルの作り方を重点的に伝えています。正しい進め方を早い段階で共有することで、我流の定着を防ぎました。特に若手には、後から修正しやすいモデルとそうでないモデルの違いを、実際の部品で見比べながら伝えています。作り方の良し悪しを具体的に体感してもらうことで、標準が「守らされるもの」ではなく「使った方が楽なもの」として受け止められるよう工夫しました。

4. 定着・活用支援を進めるうえで工夫したこと

支援では、3D設計を一時的なものに終わらせず、日常業務に根づかせることを重視しました。現場が受け入れやすい形で進めることを意識しています。

2Dを否定せず、移行しやすい設計にした

これまでの2D設計を頭ごなしに否定すると、現場の反発を招きます。そこで、既存のやり方を尊重しつつ、3Dの利点が出る部分から段階的に移す進め方としました。「2Dが悪い」ではなく「ここは3Dが向く」という伝え方に徹し、無理のない移行を目指しました。

ベテランの知見をテンプレートに反映した

テンプレートや設計標準づくりでは、ベテラン設計者が持つ図面ルールや設計上の勘所を取り入れました。属人化していた知見を仕組みに落とし込むことで、若手も同じ水準で設計しやすくなります。ベテランの協力を得られたことで、標準の説得力も高まりました。「自分たちの経験が形になる」という納得感があると、標準づくりが押しつけにならず、現場からの反発も抑えられます。ベテランを取り組みの当事者にした点が、円滑に進んだ理由の一つです。

運用しながら見直せる形にした

テンプレートや標準は一度で完成とせず、現場で使いながら改善できる前提で整備しました。実務に合わない部分を調整し続けることで、形骸化を防ぎます。使う人が育てていける仕組みにした点が、定着の鍵になりました。

5. 成果と変化

数値面の成果

3D設計を適用する部品が段階的に増え、テンプレート活用により図面作成の手戻りが減りました。作図ルールがそろったことで、修正や流用にかかる時間も短縮されています。ばらつきがなくなったことで、チェックや修正の負担も軽くなりました。以前は図面のたびに設定を整える必要がありましたが、テンプレートから始められるようになり、着手から出図までの流れがスムーズになっています。

現場の変化

2Dに戻りがちだった状態から、3Dの利点が出る場面では自然にSOLIDWORKSを選ぶ流れができました。作り方の共通ルールが浸透し、他の設計者のデータも編集しやすくなり、属人化が緩和されています。若手の我流も、標準に沿った進め方へと修正が進んでいます。データ形式の混在も徐々に整理され、どの部品がどの形式で管理されているかが見えやすくなってきました。3Dを前提とした設計が、少しずつ社内の標準的な進め方になりつつあります。

6. このような企業におすすめ

以下に当てはまる企業に向いている支援です。導入自体は済んでいるものの、活用が一部にとどまっている場合に特に効果が期待できます。

  • SOLIDWORKSを導入したが、結局2D CADに戻ってしまう
  • 3D設計が一部の設計者にとどまり、社内に定着していない
  • 作図の進め方が人によってばらばらで、データを流用しにくい
  • 若手が独学・我流で、正しい進め方が共有されていない

定着が進まない原因は、操作の習熟不足だけではなく、テンプレートや設計標準といった運用の土台が整っていない点にあることが少なくありません。研修を追加しても、土台がないままでは使われ方がそろわず、定着にはつながりにくいのが実情です。設計実務の経験を持つエンジニアが関わることで、移行方針の整理から標準づくり、教育までを実務に沿って支援できます。自社の設計にどこまで3Dを広げるべきか、という判断から一緒に整理できる点も特徴です。

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