Case Study

採番ルールの統一で「探す・間違う・伝わらない」を解消 — 産業用装置メーカーの設計情報標準化支援

Author 木村 晃一(研修講師)

今回の事例は、「設計・調達・生産の情報がバラバラで、各工程で手戻りが起きていた産業用装置メーカー」における設計情報の標準化支援です。当該企業は、複雑で高価なシステムを入れずに、現場が使いやすい形で図面・部品・変更情報を一元化することを求めていました。機械系エンジニアがこのニーズを受け、現場ヒアリングから採番ルールの策定、運用の定着までを横断して担当しています。

機械系エンジニアは、大がかりな管理システムの導入ではなく、エクセルベースの台帳と階層リストで運用しやすい仕組みを組み立てました。採番・発注・変更管理の3つを標準化したことで、「探すのに時間がかかる・発注を間違える・変更が伝わらない」状態を解消し、現場に定着する形で情報を一元化し、手戻りと品質リスクの少ない体制を確立しました。

目次

1. 支援先企業の概要

項目内容
業種産業用装置の生産・販売、切削加工支援の総合ソリューション
規模社員数 約30名
地域東京
販売形態自社製品の直販、海外代理店経由の販売
主な顧客金属加工・製造現場の設備管理・メンテナンス事業者

当該企業は、自社製品の産業用装置を直販・代理店経由で手がけています。設計・調達・生産の情報管理が統一されておらず、各工程で混乱や手戻りが生じていました。

2. 支援前の状況と課題

当該企業が抱えていた課題は、大きく3つの側面に整理できます。採番基準の不統一、発注リストの形式バラつき、そして設計変更の伝達不足です。

部品番号が単純な連番で、図面の関連性が追えない

部品番号は単純な数値の連番で付けられており、機能別やユニット別の分類がされていませんでした。そのため図面同士の関連性が把握しづらく、さらに設計者ごとに採番の基準が異なることで、後工程での確認作業が煩雑になっていました。図面を探すだけで時間がかかり、設計変更の影響範囲も追いにくい状態です。

発注リストの形式が統一されず、抜け漏れ・重複が起きる

部品発注リストは形式が統一されておらず、部品の階層構造や親子関係も整理されていませんでした。そのため必要部品の抜け漏れや重複が発生しやすく、発注ミスが月平均5〜8件起きていました。仕入先やコスト、在庫の情報も散らばっており、原価管理や在庫管理の手間も増えていました。

設計変更の共有が標準化されず、旧仕様で作業が進む

設計変更が行われても、変更内容の共有方法が標準化されていませんでした。影響範囲や導入号機が明確に管理されていないため、現場への伝達漏れや、旧仕様のまま作業が進むケースが発生していました。これらの課題により業務全体の効率が低下し、品質リスクと無駄なコストが継続的に生じていたのです。こうした状況をふまえ、標準化を現場に定着する形で立ち上げられる方法を見つけ出すことが社内の共通認識でした。

3. 実施した設計・開発支援

実施した支援内容は、以下の3点です。ルールの策定にとどまらず、既存資料の再構築と現場に合った運用設計までを通しで担当しました。

採番台帳ルールの策定と標準化

部品番号体系を機能別・ユニット別に整理し、採番ルールを統一しました。設計者ごとのバラつきをなくすことで、図面検索と影響範囲の把握を容易にしています。番号を見れば、どの機能・どのユニットの部品かが分かる体系へ切り替え、後工程の確認作業を軽くしました。

発注リストのファミリーツリー化と一元管理

バラバラだった発注リストを、親子関係で整理した階層構造のファミリーツリー形式へ統合しました。部品構成が一目で分かる形にしたうえで、部品番号・改定履歴・仕入先・コスト・在庫数を一元管理しています。装置に必要な部品をすべて記載する形にしたため、発注の抜け漏れ・重複を防ぐと同時に、在庫管理にも使える台帳になりました。

設計変更の導入管理ルール化

変更内容・理由・影響範囲・評価方法・導入判定・コスト変動・導入管理を明確に記録する仕組みを構築しました。現場・調達・生産の各部門への情報伝達を標準化することで、誤った組み立て作業を防いでいます。どの号機からどの仕様に変わったかが記録に残るため、変更の影響を追える状態になりました。

4. 標準化を進めるうえで工夫したこと

機械系エンジニアが意識したのは、現場の実情を起点にすること、既存資料を丁寧に棚卸しすること、そして定着しやすい仕組みを優先することです。

まず現場へヒアリングし、困りごとを起点にする

標準化の起点は、ルールを机上で作ることではなく、現場の困りごとを吸い上げることに置きました。設計者・調達担当・現場作業者など関係者からヒアリングを行い、「誰がどこで困っているか」を明確にしたうえで改善策を検討しています。使う人の実情に沿わないルールは定着しないため、まず現場の声を集めることを優先しました。

既存資料を棚卸しし、不整合を整理してから再構築する

過去の図面・発注リスト・変更履歴を洗い出し、重複・不整合・欠落を整理したうえで、新しいルールで標準化しました。既存の資産を無視して一から作り直すのではなく、いま現場にあるものを土台に整えることで、移行の負担を抑えています。

高価なシステムより、現場が使いやすい仕組みを選ぶ

複雑でコストのかかる管理システムではなく、現場が使いやすいエクセルベースの台帳と階層リストを採用しました。部品構成・仕入先・購入単価・員数を一元化し、定着しやすい運用方法を設計しています。ツールの高機能さよりも、現場が無理なく使い続けられることを優先した判断です。

5. 成果と変化

今回の支援による成果は、検索時間の短縮から品質リスクの低減まで多岐にわたります。

図面検索時間の短縮と、変更時の後戻り減少

採番ルールの統一により、図面検索時間が平均30〜50%短縮しました。導入装置の影響範囲の確認も迅速になり、設計変更時の後戻りが大幅に減少しています。

発注ミスの削減と、コスト・在庫管理の簡略化

ファミリーツリー化により、発注ミスが月平均5〜8件からゼロ件へ減少し、納期遅延リスクが低下しました。部品・仕入先・コストが一元化されたことで原価管理が容易になり、必要部品をすべて記載する台帳は在庫管理にも活用できています。

設計変更の伝達漏れゼロ化

導入管理のルール化により、変更内容の伝達漏れがゼロになりました。新旧仕様が混在する作業がなくなり、不適合品の発生も抑えられています。市場で不具合が起きた際にも、対策号機が瞬時に明確になるため、顧客への対応を即座に行える体制になりました。

6. このような企業におすすめ

以下のような課題を抱える企業には、本支援の活用が有効です。

  • 設計図面や部品番号の管理が属人化している
  • 発注リストが複数形式で整理されておらず、ミスが起きやすい
  • 設計変更が現場へ正しく伝わらず、後戻りや不適合品が出ている
  • 標準化・ルール化が進まず、情報管理に時間がかかっている
  • 高価なシステムは不要で、エクセルベースで一元管理したい

採番・発注・変更管理の分断を放置すると、図面を探す時間、発注ミス、旧仕様での作業が積み重なり、品質リスクとコストが継続的に発生します。高価なシステムを入れる前に、現場が使える形でルールと台帳を整えることが、定着する標準化の出発点です。弊社では、設計・生産の実務経験を持つエンジニアが、現場ヒアリングから運用の定着まで並走します。情報管理の混乱から抜け出したい企業は、ぜひ一度ご相談ください。

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