設計変更のたびにモデルが崩れる——手戻りを減らすSOLIDWORKSモデリング活用支援
設計変更を加えるたびにモデルが崩れ、修正に時間がかかる。SOLIDWORKSは使えているはずなのに、手戻りが減らない。そんな課題を抱えていた機械メーカーが、モデリング手法の見直しを通じて、設計変更に強い仕組みへと体制を整えました。
本記事では、モデルの作り方に起因する手戻りに悩む企業に対し、フィーチャ設計やアセンブリ構成の考え方を実務に沿って教育した活用支援事例を紹介します。「操作はできているのに手戻りが多い」と感じている企業の参考になる内容です。
1. 支援先企業の概要
支援先は、産業機械の設計・製造を行うメーカーです。
| 業種 | 製造業(産業機械メーカー) |
| 設計体制 | 若手中心の設計チーム |
| 使用CAD | SOLIDWORKS(日常的に使用) |
| 課題領域 | モデリング手法の改善・設計変更対応・手戻りの削減 |
SOLIDWORKSは日常的に使えており、操作の習熟は一定程度進んでいました。一方で、モデルの作り方に起因する手戻りが多く、設計変更のたびに修正工数がかさんでいました。使えているだけに、原因が見えにくかった点が特徴です。操作研修を追加すれば解決する、という発想では改善しにくいタイプの課題であり、作り方そのものを見直す視点が必要でした。
2. 支援前の状況と課題
同社の課題は、操作ができないことではなく、後の変更に耐えられないモデルの作り方にありました。日々使えているだけに、根本原因が見えにくい状態でした。ここでは、手戻りを生んでいた3つの要因を整理します。
設計変更でモデルやアセンブリが崩れる
最も目立っていたのは、寸法変更や仕様変更で関連形状が崩れることでした。変更を加えると、意図しない箇所の形状が崩れたり、エラーが発生したりしていました。修正のたびに原因を探る必要があり、設計変更が多い案件ほど工数が膨らんでいました。産業機械は仕様変更が入りやすいため、この手戻りが全体の生産性を大きく下げていました。
フィーチャの構成が場当たり的になっている
次の課題は、後の変更を想定しないモデリングでした。形状を作る際に先々の変更を考慮しておらず、フィーチャの親子関係が複雑に絡み合っていました。そのため、一箇所を直すと別の箇所が崩れる、変更に弱い構造になっていました。「とりあえず形になればよい」という作り方が、後の修正コストを押し上げていたのです。モデルが完成した時点では問題が見えず、設計変更が入って初めて弱さが表面化するため、作っている本人も気づきにくい構造でした。
我流のモデリングが定着し、見直す機会がない
3つ目は、我流が問題として認識されにくいことでした。若手設計者は独学で操作を覚え、我流のモデリングが定着していました。日常業務では動いてしまうため問題が表面化しにくく、より良い作り方を学ぶ機会がないまま進んでいました。手戻りが起きても「そういうもの」と受け止められ、作り方まで疑う発想が生まれにくい状況でした。
3. 実施したSOLIDWORKS定着・活用支援
支援は「手戻りの原因分析」「設計変更に強いモデリング手法の教育」「社内で共有できるルールづくり」の3つを軸に進めました。操作の追加ではなく、作り方の考え方を変えることに重点を置いています。
実際のモデルを使った手戻り原因の分析
まず、同社が実際に手戻りに悩んだモデルを一緒に確認し、どのフィーチャ構成が変更に弱いのかを分析しました。崩れる原因を具体的に可視化することで、何を改善すべきかを明確にしています。抽象的な「良い作り方」ではなく、自社のモデルの、この作り方が問題と示せたことで、改善の必要性が理解しやすかったとの声もありました。
設計変更に強いモデリング手法の教育
次に、後の変更に耐える設計にするため、モデリングの考え方を実務に沿って教育しました。特に重点を置いたのは、以下の点です。
| 観点 | 教育内容 |
| フィーチャの順序 | 変更しやすい構成でフィーチャを積み上げる考え方 |
| 参照・親子関係 | 不要な参照を避け、崩れにくい関係を設計する |
| アセンブリ構成 | 変更が波及しにくい部品構成・合致の考え方 |
考え方を理解したうえで実際のモデルに適用することで、設計変更が入っても崩れにくいモデルを徐々に作れるようになりました。最初は戸惑いましたが、何度も何度も練習し、効果がわかると技術者は適応が早いはずです。手順の暗記ではなく、理由の理解を重視した点がポイントです。たとえば、基準となる形状を先に決めてから細部を作る、部品間の参照は必要な範囲にとどめる、といった判断は、理由が分かって初めて自分で応用できます。なぜその順で作るのかを一つずつ言葉にしながら進めたことで、応用しやすい理解につながりました。
社内で共有できるモデリング指針の作成
学んだ内容を個人にとどめないため、社内で共有できるモデリングの指針をまとめました。若手が判断に迷ったときの拠り所となり、個人のばらつき定着を防ぎます。指針があることで、一定の水準を保ちやすくなりました。
4. 定着・活用支援を進めるうえで工夫したこと
支援では、正しい作り方を押しつけるのではなく、なぜその作り方が良いのかを実感できる形で進めました。理解を伴わなければ、定着しないためです。
失敗例を題材に「崩れる理由」を体感させた
良い作り方を示すだけでなく、実際に崩れたモデルを題材に、なぜ崩れたのかを一緒に確認しました。原因を体感することで、望ましい作り方の理由が腹落ちしやすくなります。「こう作ると、この変更でこう崩れる」と目の前で示せたことが、理解の定着につながりました。逆に、良い作り方に直したモデルで同じ変更を試すと崩れない、という比較も示しています。崩れる例と崩れない例を並べて見せることで、どこに差があるのかを実感してもらいやすくなりました。
日常業務に組み込める範囲から始めた
一度にすべてを変えようとせず、日々の設計にすぐ取り入れられる考え方から着手しました。小さな改善を積み重ねることで、無理なく定着を図っています。負担を感じさせない範囲から始めた点が、現場に受け入れられた理由です。
設計者自身が判断できる状態を目指した
手順を暗記させるのではなく、なぜその構成にするのかという判断基準を伝えることを重視しました。設計者が自分で最適な作り方を選べるようになることを目指しています。応用が利く力が身につけば、未知の設計変更にも対応しやすくなります。
5. 成果と変化
数値面の成果
設計変更時にモデルが崩れる頻度が下がり、修正にかかる工数が削減されました。設計変更の多い案件ほど効果が大きく、手戻りに追われる時間が減っています。原因を探る作業が減ったことで、設計そのものに時間を割けるようになりました。崩れたモデルを直すために夜間や休日に対応する、といった負担も軽くなり、設計の見通しが立てやすくなっています。
現場の変化
「変更すると崩れる」という前提で作業していた状態から、変更を見越して作るという意識が定着し始めました。若手設計者が判断基準を持ってモデリングできるようになり、我流に頼らない設計へと変わりつつあります。手戻りを「作り方で減らせるもの」と捉える見方が、社内に広がってきています。以前は避けられないものと考えられていた手戻りが、設計の工夫で減らせると分かったことで、モデルの作り方に対する関心も高まりました。指針をもとに設計者どうしで作り方を相談する場面も見られるようになっています。
6. このような企業におすすめ
以下に当てはまる企業に向いている支援です。操作は問題ないのに手戻りが減らない、という場合に特に有効です。
- SOLIDWORKSは使えているが、設計変更のたびに手戻りが多い
- モデルやアセンブリが、変更を加えると崩れやすい
- 若手が独学・我流でモデリングを覚えている
- より良いモデルの作り方を学ぶ機会が社内にない
操作ができることと、設計変更に強いモデルを作れることは別の力です。市販の操作研修では前者は学べても、後者にはなかなか踏み込めません。設計実務の経験を持つエンジニアが関わることで、手戻りの原因分析から、変更に強いモデリング手法の教育、社内指針づくりまでを実務に沿って支援できます。自社のモデルを題材に、どこに手戻りの原因が潜んでいるかを具体的に洗い出せる点が、汎用的な研修との違いであり当社サービスの特長の一つです。
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