後工程のリスクを設計段階で解消 — 排水機場ポンプ設備更新の一貫設計支援
地方自治体向けの排水機場で、1600mmクラスの大口径立形ポンプ設備を更新した案件です。本件は、スペースが限られた既設建屋のなかで、設備の出力を高める必要がありました。
出力増強とスペース制約を両立させるうえで、通路の確保や腐食対策など、複数の技術課題が重なっていました。こうした課題に対し、機械系エンジニアはプラント全体のレイアウト設計から詳細仕様の決定、作図指示・検図までを一貫して担当しました。
1. 支援先企業の概要
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 業種 | ポンプメーカー |
| 規模 | 従業員数 約5,500名 |
| 主な顧客 | 地方自治体 |
更新対象は、主ポンプ、減速機、駆動用ディーゼル機関、冷却水および燃料配管系統を含むプラント全体です。同エンジニアは、これらのシステム設計全般を担いました。
2. 支援前の状況と課題
既存施設の限られたスペース内で出力を高めるには、複数の技術課題を解決する必要がありました。いずれも、設計段階で織り込まなければ後工程にリスクが残るものです。
スペース制約による通路の圧迫
設備出力の向上に伴い、駆動用ディーゼル機関の全長が長くなりました。その結果、運用上必要な通路スペースが圧迫される状況がありました。
冷却水系統の水圧制限
駆動機関の冷却水系統では、許容水圧の制限をクリアする系統設計が必要でした。エンジンの要求水圧と既設冷却水ポンプの水圧条件には乖離があるため、境界領域(インターフェース)の検証が不足すると、試運転時に水圧オーバーや警報作動を招くおそれがありました。
施工時の出水リスク
現地は海面近くに位置し、満潮時には外水位がポンプ据付床レベルを上回ります。そのため、既設撤去後の止水対策が必須でした。床面の基礎工事を行う関係上、より低い水槽上面の位置で確実な止水構造が求められます。一方で、クレーンの吊り下げスペースが極めて狭い既設建屋内では、一般的な止水蓋の搬入が困難でした。
逆流防止弁の塩害腐食
海水に通じる吐出水槽内の逆流防止弁(フラップ弁)について、現地調査を行った結果、指定仕様のままでは塩害による腐食が進行すると判断されました。腐食が進むと弁体軸受部が固着し、送水不能や逆流防止不能となるリスクがありました。
3. 実施した振動対策設計支援
機械系エンジニアは、課題ごとに現地条件と機器間のインターフェースを確認し、配置・配管・材質を設計に反映しました。以下は、その設計対応です。
駆動機関の配置設計
出力向上で全長が伸びた駆動機関を、通路を圧迫しない位置に収める配置設計を行いました。エンジンベース前方を斜めに切り落とす特殊形状をメーカーと協議のうえ採用し、機関全体を前方へシフトさせています。
冷却水系統の水圧制御
エンジンの要求水圧と既設冷却水ポンプの水圧条件の乖離を整理し、許容水圧の制限内に収める系統設計を行いました。冷却水系統(排水側)の最高頂部レベルを最適化し、減圧弁・定流量弁と逃がし配管を組み合わせることで、許容水圧以下に制御する配管系統を構築しました。
二つ割構造の水密蓋
満潮時の外水位に対応する止水構造として、「二つ割」構造の新型水密蓋を設計しました。水槽内へ分割して搬入し、ボルトと止水シールで組み立てる方式です。満潮時の最大水圧に耐える強度検討もあわせて実施し、安全性を確保しています。
逆流防止弁の防食設計
現地調査の結果を踏まえ、逆流防止弁の弁体と軸受部を耐食性の高い材質へ変更しました。あわせて、弁本体に犠牲陽極(異種金属接触腐食の原理を利用)を採用し、弁体軸受部の固着につながる腐食の進行を抑えています。
これら一連のレイアウト設計・仕様決定から作図指示・検図までを、一貫して担当しました。
4. 設計を進めるうえで工夫したこと
同エンジニアの設計には、従来は現場や施工計画に委ねられがちだった判断を、設計の段階で引き取った点に特徴があります。
駆動機関の配置を、外形図任せにしなかった
駆動用ディーゼル機関の配置では、エンジンメーカーが提供する外形図どおりに据えることを優先し、建屋の狭さを理由に通路や動線の制約を受け入れる進め方になりがちでした。外形図を固定条件とするほど、出力向上で全長が伸びた機関が通路を圧迫します。
そこで同エンジニアは、外形図を所与とせず、エンジンのベース前方を斜めに切り落とす特殊形状をメーカーと協議のうえで実現しました。機関全体を前方へシフトさせ、配置の自由度を設計側でつくり出しています。
結果として、出力を高めながら、運用に必要な通路幅を確保しました。
施工時の止水を、施工計画に委ねなかった
止水対策は施工計画に委ねられがちです。しかし現地は海面近くにあり、満潮時には外水位がポンプ据付床レベルを上回ります。クレーンの吊り下げスペースが極めて狭い既設建屋では、一般的な止水蓋を搬入できません。設計段階で空間的制約を織り込まなければ、止水の手段が現場で行き詰まります。
そこで同エンジニアは、「二つ割」構造の新型水密蓋を採用しました。水槽内へ分割搬入し、ボルトと止水シールで現地組立する方式です。満潮時の最大水圧に耐える強度検討もあわせて行いました。
狭い吊りスペースでも搬入・設置できる止水構造を用意し、施工時の安全性を設計側で確保しています。
5. 成果と変化
一連のシステム設計により、設備更新に伴う複数の制約を設計段階で解消しました。後工程の不確実性を、設計品質によって抑えています。
長期にわたり安定稼働できる設備仕様
出力の向上と限られたスペースの維持、冷却配管系統の安全性向上、耐食性の強化を設計段階でクリアしました。これにより、長期にわたり安定稼働できる設備仕様を確立しています。
現場施工の安全確保と工程・コストの抑制
確実な水密蓋の設計により、現場は満潮時の水位上昇による出水リスクを気にせず施工できる環境が整いました。現場での不測の手戻りを防ぎ、工事全体の工程短縮とコスト増の抑止に寄与しています。ようになった点が、大きな変化です。
6. このような企業におすすめ
本案件のような設計支援は、空間や仕様制約が厳しい設備更新でお悩みの企業に適しています。
- 限られたスペースへの設備導入・更新
- 厳しい条件下での機械・配管の仕様策定
- 現場施工での手戻り・干渉トラブルの防止
これらの課題を経験豊富なエンジニアが解決に導きます。設備改善を検討する場合は、ぜひ一度ご相談ください。