SOLIDWORKS教育が定着しない原因と、社内に根づかせる進め方
「研修を受けさせたのに、結局ベテランしか3Dで設計していない」——SOLIDWORKSを導入した製造業では、こうした声が少なくありません。教育が定着しない背景には、受講者の努力不足ではなく、研修と実務がつながっていない構造的な要因があります。
そこで本記事では、SOLIDWORKS教育が定着しない原因を整理したうえで、優先して教える内容と、社内に根づかせる進め方を解説します。
SOLIDWORKS教育とは|操作研修と社内定着の違い
はじめに、SOLIDWORKS教育の範囲を整理します。一般的な操作研修と、社内で使い続けられる状態をつくる教育とでは、目的も教える内容も異なります。
| 観点 | 操作研修 | 社内定着のための教育 |
| 目的 | 機能と操作を覚える | 自社の設計業務で使い続ける |
| 題材 | 汎用の練習モデル | 自社の製品・図面 |
| 教える内容 | スケッチ、フィーチャ、図面作成の手順 | 社内のモデリングルール、ファイル管理、流用設計 |
| 終わり方 | 研修の修了で完了 | 実案件で使えるまで継続 |
操作研修は土台として役立ちますが、それだけで設計が速くなるわけではありません。SOLIDWORKS教育では、操作を覚えた後に自社の設計へつなげる部分まで含めて考える必要があります。
SOLIDWORKS教育が定着しない原因
研修を受けても現場で使われない状態には、いくつかの共通した原因があります。ここでは、製造業の設計部門で繰り返し見られる3つの原因を整理します。
研修で覚えた操作を自社の設計で使えない
最も多いのが、研修で覚えた操作を、自社の設計にどう使えばよいか分からない状態です。研修の題材は汎用の練習モデルが中心で、自社製品の形状や設計の流れとは異なるためです。
たとえば、研修では単品の部品を作れるようになっても、自社の装置のように数百点の部品を組み合わせる設計では手が止まります。アセンブリの組み方や、既存の2D図面からどう3Dに起こすかは、研修では扱われにくい部分です。
その結果、忙しい案件ほど慣れた2D CADに戻り、3Dは一部の設計者だけが使う状態になります。研修と実務の間をつなぐ教育がないことが、定着しない最大の原因です。
社内の教え方が人によってばらつく
次に多いのが、社内で教える人によって、教える内容や使い方がばらつく状態です。教える役が特定のベテランに限られ、本人の経験やくせがそのまま伝わるためです。
教え方がばらつくと、次のような違いが設計者ごとに生まれます。
- スケッチの拘束の付け方や寸法の入れ方
- フィーチャを作る順番とその名前
- 部品やファイルの名前の付け方
同じ製品なのに、設計者ごとにモデルの作り方が違えば、他の人が開いたときに修正しにくくなります。教える側の負担も一部の人に集中し、教育そのものが属人化していきます。
モデリングの社内ルールが決まっていない
3つ目の原因は、モデリングやファイル管理の社内ルールが決まっていないことです。ルールがないまま教えると、何を正解として教えればよいかが定まらないためです。
たとえば、設計変更のたびにモデルが崩れるのは、フィーチャの作り方や参照の取り方がばらばらなことが原因の一つです。部品番号やファイル名の付け方が決まっていなければ、過去のデータを探して流用することもできません。
教育を始める前に、最低限のルールを決めておく必要があります。ルールがあれば、教える側は迷わずに済み、教わる側も同じ基準で設計できるようになります。
SOLIDWORKS教育で優先して教える内容
限られた時間で教育を進めるには、すべての機能を均等に教えるのではなく、自社の設計に効くものから教えます。ここでは、優先して教えたい3つの内容を整理します。
自社製品を題材にした基本操作
最初に教えたいのは、自社製品を題材にした基本操作です。練習用のモデルより、普段扱っている部品や図面で学ぶ方が、実務に置き換えやすいからです。
たとえば、過去に設計した部品を3Dで作り直す課題にすると、研修の操作がそのまま日々の設計に結びつきます。図面化まで一通り行えば、社内の図面ルールとSOLIDWORKSの機能の対応も確認できます。
題材を選ぶ際は、形状が単純で、よく流用する部品から始めると進めやすくなります。自社の部品で一度作り切る経験が、2Dに戻らないための土台になります。
設計変更に強いモデリングの作り方
次に教えたいのは、設計変更に強いモデルの作り方です。製造業の設計では寸法や形状の変更が頻繁に起こり、そのたびにモデルが崩れていては作業が止まるためです。
具体的には、次のような作り方を社内で統一して教えます。
- 基準となる面や原点から寸法を取る
- スケッチを完全に拘束してから次の形状に進む
- フィーチャに意味の分かる名前を付ける
こうした作り方は、操作研修では深く扱われないことが多い部分です。変更しても崩れないモデルを作れるようになると、流用設計や他の人による修正もしやすくなります。
図面・部品番号・ファイル管理の社内ルール
3つ目は、図面や部品番号、ファイル管理の社内ルールです。個人がそれぞれのやり方でデータを保存すると、後から探せず、流用もできなくなるためです。
社内ルールとして決めておきたい項目は、たとえば次のとおりです。
| 項目 | 決めておく内容 |
| 部品番号・ファイル名 | 採番の規則と、名前に入れる情報 |
| 保存場所 | 案件ごと・部品ごとのフォルダ構成 |
| 図面テンプレート | 図枠、注記、尺度などの共通設定 |
ルールは細かく作り込むより、まず最低限を決めて全員が守ることを優先します。全員が同じ場所に同じ名前で保存するだけでも、データを資産として使いやすくなります。
SOLIDWORKS教育を社内に根づかせる進め方
教える内容が決まったら、次はそれを社内に根づかせる進め方です。ここでは、研修で終わらせず、実務で使い続ける状態をつくるための5つのステップを示します。
ステップ1:設計の手戻りと困りごとを洗い出す
最初に、今の設計で起きている手戻りや困りごとを洗い出します。何のために教育をするのかが明確になり、優先して教える内容を決めやすくなるためです。
たとえば「図面の差し戻しが多い」「過去の部品を探すのに時間がかかる」といった困りごとを、設計者から集めます。3Dにすれば防げた手戻りが分かれば、教育の目的を社内で共有しやすくなります。
ステップ2:教える役となる推進役を決める
次に、社内で教える役となる推進役を決めます。教育の窓口が決まっていないと、質問の行き先がなくなり、使い方のばらつきも直せないためです。
推進役は1〜2名の少人数から始め、まずその人が集中して習得します。推進役が社内ルールを理解していれば、他の設計者へ同じ基準で教えられるようになります。
ステップ3:社内ルールを決めて教材にする
推進役が決まったら、モデリングやファイル管理の社内ルールを決め、教材にまとめます。ルールを教材として残しておけば、教える人が変わっても内容がぶれないためです。
教材は文章だけでなく、操作画面の録画を組み合わせると伝わりやすくなります。動画で残す進め方は、「動画マニュアルで製造業の人材教育を改善するための、撮影前の設計と運用」で詳しく整理しています。
ステップ4:実案件で使いながら質問に答える
教材ができたら、新規の案件からSOLIDWORKSで設計を始め、使いながら質問に答えます。研修だけで終わらせると、実務で詰まったときに2Dへ戻ってしまうためです。
質問は、推進役や外部の講師が受け付け、回答を社内で共有します。同じ質問への回答を蓄積していけば、社内のQ&A集として次の教育にも使えるようになります。
ステップ5:習熟度をスキルマップで確認する
最後に、誰がどこまで使えるようになったかを、スキルマップで確認します。習熟度が見えないと、教育が進んでいるのか、どこで止まっているのかが分からないためです。
スキルマップには、たとえば次のような項目を並べます。
- 部品モデリング
- アセンブリの作成
- 図面化と社内ルールに沿った保存
- 設計変更への対応
習熟度を定期的に更新すれば、次に誰に何を教えるかを決めやすくなります。スキルマップの作り方は、「製造現場の人材育成とは?」も参考にしてください。
SOLIDWORKS教育で外部の力が有効な場面
ここまでの進め方を、社内の人員だけで回しきるのは簡単ではありません。ここでは、外部の講師や支援を組み合わせることが有効な場面を整理します。
社内に教えられる人がいない場合
社内にSOLIDWORKSを教えられる人がいない、または一人に負担が集中している場合は、外部の講師を活用する方法があります。教える役が不在のままでは、ステップ2の推進役を育てることもできないためです。
特に、現役で設計に携わっている講師であれば、操作だけでなく、設計変更に強いモデルの作り方や社内ルールの決め方まで相談できます。推進役を育てるところまで外部に任せると、講師が抜けた後も社内で教育を続けやすくなります。
2D設計から3D設計へ移行する場合
2D CAD中心の設計から3D設計へ移行する場合も、外部の支援が役立ちます。移行期は2Dと3Dが混在しやすく、どの案件から3Dに切り替えるかの判断が難しいためです。
3D CADへの移行の進め方は、「中小製造業が3DCAD導入で失敗する3つの原因と、定着までの8ステップ」で詳しく解説しています。2D設計との併用から抜け出した例は、SOLIDWORKSの定着支援の事例をご覧ください。
研修後の質問対応まで手が回らない場合
研修は受けたものの、実務での質問に答える人がいない場合も、外部の力を借りられます。研修後に質問できる相手がいないと、詰まった設計者から順に2Dへ戻ってしまうためです。
外部に質問対応を任せる場合も、回答は社内で共有し、Q&A集として残します。こうしておけば、外部の知見を社内の教材として蓄積できます。設計変更のたびにモデルが崩れる課題に取り組んだ例は、SOLIDWORKSモデリング活用支援の事例で紹介しています。
まとめ|SOLIDWORKS教育は社内ルールと実務で定着させる
SOLIDWORKS教育は、操作研修を受けただけでは定着しません。自社の設計につなげる教育と、社内ルールに沿った教え方がそろって、はじめて現場で使い続けられるようになります。押さえたい要点は、次の4つです。
- 研修の題材を自社の製品・図面に置き換える
- モデリングやファイル管理の社内ルールを先に決める
- 推進役を決め、実案件で使いながら質問に答える
- スキルマップで習熟度を確認し、次の教育につなげる
教育を研修で終わらせず、社内ルールと実務の中で続けることが、SOLIDWORKSを根づかせる近道です。
弊社のSOLIDWORKS研修・導入定着支援では、現役の設計者が、自社の図面を題材にした研修から社内ルールづくり、定着まで伴走します。どこまでを社内で教え、どこから外部に任せるかを整理する段階から、お気軽にご相談ください。
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