強度計算の外注で費用と納期を抑える|高価な解析ソフトに頼らない判断基準
「架台の強度確認のたびに外注していて、費用も待ち時間もかさむ」——装置や治具を設計する製造業では、こうした悩みが少なくありません。強度計算というと高価な解析ソフトを思い浮かべがちですが、実際には材料力学の公式と便覧で判断できる案件も多くあります。一方で、前提を誤れば結果も誤るのが強度計算です。
そこで本記事では、解析ソフトが必要な案件の見極め方と、外注先を選ぶときに確認したい実績を解説します。
強度計算を外注する前に整理したい前提
強度計算の外注を検討するときは、「何を確かめたいのか」と「どの手段で確かめるのか」を分けて考えます。ここでは、強度計算の役割、計算手段の違い、外注先の選択肢を整理します。
強度計算は壊れない根拠を設計段階で示す
強度計算の役割は、部材が想定荷重で壊れないこと、変形しすぎないことを、設計段階で根拠をもって示すことです。試作後に強度不足が見つかると、図面修正、部品の再手配、組立のやり直しが発生し、納期への影響も大きくなります。
産業機械や装置設計で強度確認が求められる代表的な部位は、次のとおりです。
- 装置を支える架台・フレーム
- ワークを保持する治具・ブラケット
- 動力を伝える軸・キー
- ボルト締結部・溶接部
これらは装置ごとに形状が変わるため、カタログ値だけでは判断できない場面が多くあります。強度を確認できる人が身近にいるかどうかで、出図のスピードが変わります。
理論計算とFEM解析は確認できる範囲が異なる
強度計算の手段は、材料力学の公式を使う理論計算と、解析ソフトを使うFEM解析に大別できます。理論計算は「部材全体として持つか」を素早く確かめる手段で、FEM解析は「どこに応力が集中するか」を詳しく見る手段です。
| 観点 | 理論計算 | FEM解析 |
| 得意な対象 | 梁・柱・軸・ボルトなど単純な部材 | 複雑な3次元形状・接合部 |
| 分かること | 最大応力・たわみ・座屈荷重の目安 | 応力分布・局所的な応力集中 |
| 必要な環境 | 便覧・表計算ソフト | 解析ソフトのライセンス・高性能PC |
| 所要時間 | 短時間で済むことが多い | モデル作成・条件設定・結果検証で長くなりやすい |
| 前提条件の見え方 | 計算式にそのまま表れる | ソフト内の設定に埋もれやすい |
理論計算は解析ソフトの簡易版ではなく、確認の粒度が違う手段です。この違いを押さえておくと、外注する範囲を決めやすくなります。
外注先は3つの選択肢に分かれる
強度計算の外部への依頼先は、大きく3つに分かれます。依頼先によって、得られる成果物と社内に残るものが変わります。
| 依頼先 | 主な成果物 | 向いている場面 |
| 受託解析会社 | 解析レポート | 複雑形状・特殊条件の詳細検証 |
| 設計会社(設計委託) | 図面・計算書を含む設計一式 | 設計業務ごと切り出したい場合 |
| 技術者の参画 | 社内チームと作る計算書・レビュー | 計算と判断の力を継続的に補いたい場合 |
「強度計算の外注」というと、解析会社への依頼を思い浮かべがちです。しかし、解析ソフトを使わずに判断できる案件が中心なら、計算できる技術者に参画してもらう方法も選択肢に入ります。
強度計算が中小製造業で滞る理由
強度計算を外注に頼りがちになる背景には、個人のスキル不足ではなく、組織の構造的な要因があります。ここでは、中小製造業の設計部門で起きやすい3つの詰まりを整理します。
計算できる設計者がベテランに偏っている
社内で強度計算を任せられる人が、1〜2名のベテランに限られているケースは珍しくありません。CADでの作図は若手でもこなせますが、荷重を見積もり、公式を選び、安全率を決める判断は経験に依存しやすいためです。
その結果、設計レビューの終盤で強度確認がベテランに集中します。ベテランの手が空くまで出図は止まり、別案件が重なる時期には確認待ちの図面が積み上がります。退職や配置転換が決まれば、計算の根拠ごと社内から失われるおそれもあります。
解析ソフトを導入しても使いこなせる人がいない
解析ソフトを導入しても、強度計算の詰まりが解消するとは限りません。FEM解析は操作を覚えるだけでは使いこなせず、拘束条件の置き方やメッシュの妥当性、結果の読み方に、材料力学の理解が求められるからです。
よくあるのは、3D CADに付属する解析機能を使ったものの、出てきた応力値が正しいか判断できないケースです。カラーの応力分布図は説得力があるように見えますが、条件設定を誤れば数値は大きくずれます。結局ベテランに確認を回すことになり、ライセンス費をかけても負荷は減りません。
「念のためFEM」で納期とコストが膨らむ
判断できる人がいないと、解析ソフトを使わずに判断できる案件まで、解析会社へ外注する流れが生まれます。案件ごとに外注すると、次のような負担が積み重なります。
- 見積・発注・NDA締結などの事務手続き
- 図面や荷重条件を外部向けに整理する作業
- 解析結果を受け取るまでの待ち時間
- 設計変更のたびに発生する再解析の依頼
特に設計変更の多い個別受注の装置では、再解析のたびに出図が遅れます。解析が必要かどうかの判断基準が社内にないことが、納期とコストを押し上げる要因になっています。
強度計算で解析ソフトが要らない案件の条件
外注の要否を決める出発点は、案件ごとに解析ソフトが本当に必要かを見極めることです。ここでは、公式で判断できる条件、解析ソフトが必要になる条件、迷ったときの進め方を整理します。
構造と荷重が単純なら材料力学の公式で判断できる
構造と荷重が単純で、力の流れを図に描ける案件は、材料力学の公式で判断できます。公式そのものが、こうした条件を前提に組み立てられているためです。公式で判断しやすい条件は、次のとおりです。
- 部材を梁・柱・軸・板などの単純な形状に置き換えられる
- 荷重が静的で、大きさと作用位置を見積もれる
- 支持条件を固定・単純支持などに置き換えられる
- 材料を弾性範囲内で使う
- 変形が小さく、形状の変化を無視できる
たとえば、モータを載せる架台の梁のたわみ、ブラケットの曲げ応力、ボルトのせん断・引張などは、多くの場合この条件に収まります。日常的な強度確認の多くは、解析ソフトを使わずに判断できます。
形状・荷重・材料が単純化できないなら解析ソフトが要る
形状・荷重・材料のいずれかを単純なモデルに置き換えられない場合は、FEM解析を検討します。公式は、前提条件の外側では精度を保証できないためです。
| 条件 | 公式で扱いにくい理由 |
| 複雑な3次元形状(鋳物、樹脂成形品など) | 断面性能を定義しにくい |
| 便覧に応力集中係数がない切欠き・穴 | 局所的な応力を見積もれない |
| 部品同士の接触・摩擦 | 荷重の伝わり方が条件で変わる |
| 塑性変形・大変形 | 線形の公式が成り立たない |
| 複雑な構造の振動・衝撃 | 時間とともに変わる応答を追いにくい |
これらに該当する部位があるかどうかが、解析ソフトを使うべきかの分かれ目です。該当しなければ、高価な環境を用意しなくても判断できる可能性が高い案件です。
迷ったときは全体を計算し局所だけ解析する
判断に迷う案件は、まず公式で全体を検討し、気になる部位だけをFEMで確認します。構造全体を最初から解析すると、モデル作成と条件設定に時間がかかるためです。たとえば溶接構造の架台であれば、次の順で進めます。
- 梁・柱の曲げ応力とたわみを公式で確認し、部材サイズを決める
- 余裕が小さい部位や、形状が複雑な接合部を洗い出す
- その部位だけをFEMでモデル化し、局所的な応力を確認する
この進め方なら解析の対象を絞れるため、外注する範囲と費用も小さくなります。全体計算の結果は、解析結果が妥当かを確かめる目安にも使えます。
強度計算を公式で行うと安く速い理由
前章の条件に収まる案件では、解析ソフトを使わない計算のほうが、費用と納期の両面で有利になることが多くあります。ここでは、その理由を3つの観点から整理します。
ソフトとPCへの投資が要らない
公式による計算は、解析ソフトや高性能なPCを用意しなくても進められます。必要なのは、材料力学の知識と便覧、計算書を組む表計算ソフトです。社内でFEM解析を行う場合に発生しやすい負担は、次のとおりです。
- 解析ソフトのライセンス費と年間保守費
- 大きなモデルを扱える性能のPC・ワークステーション
- 操作と条件設定を習得するための教育時間
外注する場合も、こうした環境のコストは依頼費用に反映されます。解析ソフトが不要な案件を見極めるだけで、設備投資を抑えたまま強度確認を回せるようになります。
解析が必要な部位でも、高価な商用ソフトが必須とは限りません。弊社が支援した測定機器の開発では、無償の解析ソフトで振動解析を行い、商用ソフトを新たに導入せずに試作前の対策まで進めました。詳しくは「測定機器の振動解析支援の事例」をご覧ください。
設計変更にすぐ追従できる
公式による計算は、設計変更があっても数値を差し替えるだけで再計算できます。部材寸法や荷重条件が変わっても、計算の骨格はそのまま使えるためです。
個別受注の装置設計では、客先仕様の変更やレイアウト調整によって、架台の高さや搭載機器の重量が途中で変わることがよくあります。表計算ソフトで計算書を組んでおけば、変更後の確認はその日のうちに済ませられます。FEM解析ではモデル修正と再計算が必要になり、外注していれば再依頼の手間も加わります。
前提条件が計算書に残り検証しやすい
公式による計算では、どんな前提で計算したかが計算書にそのまま残ります。荷重の大きさ、支持条件、使った公式、材料の許容値が式として並ぶため、第三者が追いかけて確認できます。
設計レビューの場でも、上司や同僚が紙1枚から前提の誤りに気づけます。装置の納入時に顧客から強度の根拠を求められた場合も、判断の筋道を順を追って説明できます。前提の誤りを早い段階で見つけられることが、手戻りを防ぎ、結果として納期の短縮にもつながります。
強度計算に基礎知識と現場経験が欠かせない理由
解析ソフトに頼らない計算は安く速い反面、計算する人の知識と経験に結果が大きく左右されます。ここでは、経験の差が出やすい3つの場面を整理します。
荷重条件の見積もりは現場経験に左右される
強度計算で最も差が出るのは、どんな荷重がかかるかを見積もる段階です。公式を正しく使えていても、入力する荷重が実態とずれていれば、結果もずれます。現場を知らないと見落としやすい荷重の例は、次のとおりです。
- 起動・停止時の慣性力や衝撃
- 中央からずれた位置にかかる偏荷重
- 吊り上げや搬送時にかかる荷重
- 据付時の芯ずれによって生じる付加荷重
これらは図面だけを見ていても気づきにくく、装置が実際にどう使われ、どう運ばれるかを知っている人ほど拾えます。荷重の洗い出しには、設計知識だけでなく現場経験が欠かせません。
応力集中を見落とすと破損につながる
公式で求まるのは断面の公称応力であり、穴や段付き部で局所的に高くなる応力は、別途考慮しなければなりません。破損は、応力が集中する部位から始まることが多いためです。
軸の段付き部やキー溝、ブラケットのボルト穴周りは、応力集中が起きやすい代表例です。経験のある技術者は、便覧の応力集中係数を使って局所応力を見積もり、繰り返し荷重を受ける部位では疲労の観点からも確認します。こうした部位を見落としたまま公称応力だけで合否を判断すると、計算上は持つはずの部品が使用中に割れるおそれがあります。
安全率の置き方で過剰設計にも強度不足にもなる
安全率は、大きくしすぎても小さくしすぎても問題になります。どの不確かさをどの段階で見込むかによって、同じ部材でも結論が変わるためです。
荷重を最大側で見積もり、材料強度を下限で取り、さらに大きな安全率を掛けると、余裕が二重三重に重なります。その結果、部材が過大になり、装置重量や材料費に跳ね返ります。逆に、静的な強度だけを見て繰り返し荷重を考慮しなければ、安全率を取ったつもりでも強度不足になります。安全率の妥当性は、似た装置での使用実績や破損事例を知っていてこそ判断できます。
強度計算の外注先を選ぶときに確認したい実績
外注で失敗しないためには、解析ソフトを持っているかどうかより、計算する人の知識と経験を確認することが近道です。ここでは、依頼前に確認したい4つの観点を整理します。
自社と近い装置・部位の計算実績を確認する
まず確認したいのは、自社の装置や部位に近い計算を手がけた実績があるかどうかです。荷重の見積もりや安全率の置き方は、装置の使われ方を知っているかどうかで精度が変わるためです。
たとえば、搬送装置の架台と、プレス機周りの治具では、想定すべき荷重の性質が異なります。依頼前には、過去に扱った装置の種類や部位、そのときの荷重条件を具体的に聞いてみてください。経験のある技術者であれば、類似案件で注意した点まで答えられます。
計算の前提条件まで説明できるかを確認する
計算結果の数値だけでなく、その前提条件まで説明できるかを確認します。強度計算の信頼性は、公式の正しさより前提の置き方で決まるためです。依頼前の打ち合わせでは、次のような質問が判断材料になります。
- この部位では、どんな荷重の場面を想定するか
- 支持条件をどう置くか、その理由は何か
- 安全率をどの程度に設定し、何を根拠にするか
- 応力集中が起きそうな部位をどう扱うか
答えが公式名の説明にとどまらず、前提の置き方や確認の順序に及ぶかを見てください。そこまで説明できる相手であれば、計算書の中身についても対話しながら進められます。
解析が必要な部位を切り分けられるかを確認する
公式で判断できる範囲と、解析ソフトが必要な範囲を、部位ごとに切り分けられるかも確認します。この切り分けができないと、すべてを解析に回して費用が膨らむか、解析が必要な部位を公式だけで済ませてしまうかのどちらかになるためです。
信頼できる依頼先は、「この梁は公式で十分ですが、この溶接部はFEMで確認したほうがよい」というように、部位ごとに手段を提案できます。自前で解析環境を持っていなくても、解析が必要な部位を特定し、外部の解析と組み合わせる段取りまで描けるかが、実力を見極める手がかりになります。
計算書と判断基準を社内に残せるかを確認する
外注する場合も、判断の根拠が社内に残る形で納品してもらいます。結果だけを受け取ると、設計変更のたびに同じ依頼を繰り返すことになるためです。納品物として確認したい項目は、次のとおりです。
| 項目 | 確認したい内容 |
| 前提 | 対象部位、使用条件、想定した荷重の場面 |
| 荷重・拘束 | 大きさ・作用位置・支持条件とその根拠 |
| 計算式 | 使った公式と出典(便覧・規格など) |
| 判定 | 許容値、安全率、合否の判断 |
| 計算ファイル | 数値を差し替えて再計算できる表計算ファイル |
これらがそろっていれば、軽微な設計変更は社内で再計算でき、若手が計算の進め方を学ぶ教材にもなります。依頼範囲に計算書の様式整備まで含めておくと、外注の効果が社内に蓄積されます。
弊社が支援した設備架台の事例では、材料力学に基づく強度検討をExcelの自動計算ツールと解説動画にまとめ、社内で使える形で残しました。その結果、架台の軽量化と、強度検討にかかる時間の最大90%削減につながっています。進め方は「設備架台設計における強度計算支援の事例」で紹介しています。
まとめ|強度計算の外注は解析ソフトの要否の見極めから始める
強度計算の外注を検討するときは、依頼先を選ぶ前に、案件ごとに解析ソフトが本当に必要かを見極めることが出発点です。構造と荷重が単純な案件は、高価なソフトやPCがなくても判断でき、費用と納期を抑えやすくなります。押さえたい要点は、次の4つです。
- 自社の強度確認案件のうち、解析ソフトなしで判断できるものを見極める
- 迷う案件は全体を公式で計算し、局所だけを解析に回す
- 外注先候補に、自社と近い装置での計算実績と前提の説明力があるかを確認する
- 計算書と判断基準が社内に残る形で依頼する
弊社の設計・開発の受託/エンジニア紹介サービスでは、機械・電気・制御分野の設計業務の受託と、技術者のご紹介を行っています。解析ソフトなしで判断できる部位と解析が必要な部位の切り分けから、お気軽にご相談ください。
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