スポーク型PMモータの原理と設計課題|磁束集中から量産化の壁まで解説
「スポーク型は磁束集中で高トルク密度が得られる」。スポーク型PMモータは、多くの場合この一言で説明されます。しかし開発の現場では、磁束集中の効果と引き換えに、磁石の保持、減磁、製造公差といった別の課題を同時に抱えることになります。本記事では、原理を押さえたうえで、ロータ構造の選び方、設計上の壁、量産化の論点、実用化の現在地までを設計者の視点で整理します。
スポーク型PMモータとは:磁石配置と磁化方向の特徴
スポーク型は、ロータ鉄心の内部に磁石を埋め込むIPM(埋込磁石型)の一種です。本章では、他の代表的なロータ構造との違いと、磁束集中が生まれる仕組みを整理します。
SPM・V字IPMとの構造の違い
スポーク型の特徴は、磁石を径方向に立てて並べ、磁石と磁石に挟まれた鉄心をそのまま磁極として使う点にあります。代表的な3つの構造を比べると、違いは次のとおりです。
| 構造 | 磁石の置き方 | 磁極の作り方 | 主な特徴 |
|---|---|---|---|
| SPM(表面磁石型) | ロータ表面に貼り付け | 磁石表面がそのまま磁極 | 構造が単純。高速では飛散対策が必要 |
| V字IPM | 鉄心内部にV字状に埋め込み | V字の内側の鉄心に磁束を集める | リラクタンストルクを併用しやすく、車載駆動用で広く使われる |
| スポーク型 | 鉄心内部に放射状に埋め込み | 隣り合う磁石に挟まれた鉄心が磁極 | 磁束集中により空隙磁束密度を高めやすい |

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外見上の違いは磁石の向きですが、設計上の違いは「磁束をどこに、どれだけ集めるか」にあります。
磁化方向が「周方向」である意味
スポーク型の磁石は径方向に長く配置されますが、磁化方向は周方向です。隣り合う磁石は、同じ極どうしが向かい合うように配置されます。そのため、2つの磁石に挟まれた鉄心には、左右両側から磁束が流れ込みます。
図面では放射状の磁石形状に目が行きがちですが、着磁方向を取り違えると磁極そのものが成立しません。磁石の発注仕様や着磁ヨークを設計する段階で、最初に確認しておきたい点です。
磁束集中の原理
磁束集中とは、磁石の広い磁極面から出た磁束を、それより狭い空隙側の磁極面に集めることです。簡易的には、次の関係で表せます。
B_gap ≈ k × Br × (A_PM / A_pole)
- B_gap:空隙磁束密度、Br:磁石の残留磁束密度
- A_PM:1つの磁極に磁束を供給する磁石面の合計面積
- A_pole:空隙に面する磁極の面積
- k:漏れ磁束や磁気抵抗の影響をまとめた係数(1未満)
面積比を1より大きくすれば、Brの低い磁石でも空隙磁束密度を稼げます。ただし、磁極鉄心が飽和するとこの比例関係は崩れます。面積比を上げるほど効くという単純な話ではない点は、後半の設計課題の章であらためて扱います。
スポーク型が再注目されている3つの背景
スポーク型自体は以前から知られた構造です。それでも近年、論文と特許の両面で動きが続いている背景を、3つに分けて整理します。
希土類依存を下げるフェライト化の要請
最大の背景は、ネオジム磁石(NdFeB)への依存を減らしたいという要請です。フェライト磁石は安価で調達リスクも小さい一方、Brはネオジム磁石の3〜4割程度にとどまります。そのまま表面に貼るだけでは、必要なトルクを得にくいのが実情です。
スポーク型の磁束集中は、この磁力の不足を構造で補う手段として位置づけられています。大型車両向けに、既存の希土類モータを置き換える前提でフェライト・スポーク型を試作評価した研究も報告されています(後述)。
サーボ・トラクションでの高トルク密度要求
2つ目は、限られた外径でトルクを稼ぎたい用途の存在です。米国の大学グループによるフォーミュラE車両向けの研究では、3,400の設計候補からトルク密度と損失のトレードオフを定量化し、試作機の実験検証まで行っています。
ダイレクトドライブや低中速で高トルクが求められる用途では、外径を大きくせずに空隙磁束を上げられる点がスポーク型の強みになります。
研究の焦点が「形状」から「量産性」へ移行
3つ目は、技術課題の重心が変わってきたことです。かつての研究は、磁石や磁極の形状最適化が中心でした。近年は、次のような量産を前提にした論点が目立ちます。
- 接着剤や樹脂に頼らない磁石の保持方法
- 挿入クリアランスによる磁石位置のばらつき対策
- ロータを組み立ててから着磁する工程の設計
- 積層造形(AM)によるロータ製造
言い換えると、スポーク型は「磁気回路として成立するか」から、「製品として量産できるか」を問う段階に入っています。
ロータ構造の4分類と特性比較
スポーク型の性能は、磁石形状だけでなく、磁石と磁極を機械的にどう支えるかで大きく変わります。本章では支持方式で4つに分類し、それぞれの特性を比較します。

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一体積層コア型:単純な構造とブリッジ漏れ
磁極、内周部、外周のつなぎ部分(保持ブリッジ)を1枚の電磁鋼板から打ち抜き、積層する方式です。部品点数が少なく、既存のプレス・積層工程をそのまま使えます。
弱点は、磁石と磁極を保持するブリッジが、そのまま磁束の短絡路になることです。高速化のためにブリッジを太くするほど漏れ磁束が増え、磁石を活かしきれなくなります。
分割磁極+非磁性ハブ型:磁気と構造の機能分離
磁極鉄心を個別に積層し、ステンレスなどの非磁性ハブに組み付ける方式です。磁束を通す部材と荷重を受ける部材を分けるため、ロータ内周側の漏れ磁束を大きく減らせます。英国の大学の研究では、モミの木状(fir tree)の嵌合で磁極を支える高性能フェライト・スポークロータが検討されています。
一方で、嵌合部の応力集中、部品間の累積公差、組立工数の増加は避けられません。高速域ほど、構造解析の精度が性能を左右します。
樹脂モールド・機械保持型
磁極片と磁石を樹脂で一体成形したり、鉄心に磁石の飛散防止用の爪を設けたりする方式です。日本電産(現ニデック)の国際公開特許WO2019/065119が、その一例です。磁石の外周側の一部だけを覆う飛散防止部と切欠きを組み合わせ、保持強度と低振動の両立を図っています。
同特許は、樹脂モールドだけでは回転数によって強度不足になり得ると指摘しています。樹脂は単独で使うより、機械保持と併用する前提で考えるのが実務的です。
オープンブリッジ・AM型:新しい製造アプローチ
磁石の外周側を鉄心で閉じないオープンブリッジ構造や、積層造形(AM)でロータを作る方式です。ベルギーとエストニアの大学による研究グループは、フェライト磁石のスポーク型ロータを3Dプリンタで2種類製作し、従来の積層ロータと実験比較しました。
オープンブリッジを採用した造形ロータは、出力と逆起電力が同等のまま、トルクリップル、電圧THD、材料使用量で積層ロータを上回ったと報告されています。ただし、造形材の鉄損、疲労強度、コストについては、量産を判断できるだけのデータはまだ限られています。
4つの方式の特性を整理すると、次のようになります。
| 評価軸 | 一体積層コア型 | 分割磁極+非磁性ハブ型 | 樹脂モールド・機械保持型 | オープンブリッジ・AM型 |
|---|---|---|---|---|
| 漏れ磁束 | 多い(ブリッジ経由) | 少ない | 保持部の構成次第 | 少ない |
| 高速適性 | ブリッジ厚との妥協が必要 | 支持体の設計次第で高い | 樹脂単独では限界がある | 実証データを蓄積中 |
| 工程・部品点数 | 少ない | 多い(嵌合・バランス調整) | 成形金型と工程が増える | 造形と後処理が必要 |
| 公差の影響 | 磁石挿入の隙間 | 累積公差が増える | 成形で位置を固定しやすい | 造形精度に依存 |
表のとおり、分割型が常に優れるわけではありません。漏れ磁束の削減幅と、構造・工程の複雑化を天秤にかけ、用途の回転数と生産数量から選ぶのが現実的な判断です。
設計を難しくする5つの技術課題
スポーク型の設計では、ひとつの性能を上げると別の性能が下がる場面が繰り返し現れます。ここでは、電磁設計と構造設計の境界で起きる5つの課題を整理します。
磁束集中がもたらす局所磁気飽和
磁束を狭い磁極に集めるほど、磁極の先端や細いブリッジ部が先に飽和します。飽和が始まると、磁石を増やしても空隙磁束は伸びにくくなり、高調波と鉄損が増えます。「磁石を厚くしたのにトルクが伸びない」という現象は、多くの場合この飽和で説明できます。
対策は磁石厚の増減ではなく、次の寸法を同時に最適化することです。
- 磁極の幅と極弧角
- 磁石の径方向の長さと形状(矩形・台形など)
- 内周側・外周側のフラックスバリア(磁束を遮る空隙)の形状
- ステータのティース幅
線形の解析式では高負荷時の性能を予測できないため、非線形の磁界解析(FEA)が前提になります。
保持ブリッジは漏れ磁束の経路にもなる
一体積層コア型では、遠心力から磁石と磁極を守るブリッジが、同時に磁束の近道になります。これがスポーク型の最も根本的なトレードオフです。

[画像ファイル:spoke-motor-bridge-tradeoff.png]
ブリッジを太くすれば機械強度は上がりますが、漏れ磁束も増えます。細くすれば磁束の利用率は上がりますが、高速域での安全率が下がります。スポーク型の設計の中心は、この妥協点を電磁と構造の両面から決めることにあります。
フェライト特有の低温減磁リスク
フェライト磁石は、ネオジム磁石とは逆に、低温ほど保磁力が下がる性質を持ちます。そのため、寒冷時の短絡や過電流が最も厳しい減磁条件になります。
スウェーデンの大学による大型車両向けの研究では、−30℃での三相対称短絡を最悪条件とし、磁石本体の不可逆減磁に対して安全率1.3以上を確保する設計がとられました。同じグループは別の論文で、減磁を一律に避ける従来の発想は高性能化の妨げになり得るとし、減磁を最適化の評価項目に組み込むべきだと指摘しています。減磁マージンは、用途の故障モードと制御側の保護方式とセットで決める必要があります。
PWM高調波による磁石渦電流損
インバータ駆動では、スイッチングに起因する高周波の磁束変動が、磁石内部に渦電流を発生させます。磁石の発熱は、ネオジム磁石では高温減磁の引き金になります。対策の切り口は、主に次の3つです。
- 磁石側:磁石を分割して絶縁し、渦電流のループを小さくする
- 鉄心側:電磁鋼板の薄板化で鉄心の渦電流を抑える
- インバータ側:キャリア周波数や電圧パルスパターンを見直す
なお、周波数条件によっては、磁石の分割数を増やしても損失が下がりにくい場合があります。国内でも、インバータの電圧パルスパターンを工夫して磁石渦電流損を抑える研究が大学から報告されています。モータ単体ではなく、インバータとの協調で損失を抑える視点が欠かせません。
径方向電磁力によるNVH
スポーク型は空隙磁束が高く突極性も強いため、空隙磁束の高調波が径方向の電磁力となり、ステータを振動させやすい構造です。前出の日本電産の特許では、磁極外周の切欠き位置を極対数と電気角次数から決める手法を示しています。
同特許の解析例では、4次の径方向電磁力を対策なしの約12%まで下げた一方、10次成分は約74%までの低減にとどまっています。ひとつの次数を狙った対策が、すべての次数に効くわけではありません。ステータの固有振動モードと合わせて、どの次数を優先するかを先に決めておくことが、手戻りを減らす近道です。
量産化で問われる製造公差・着磁・熱設計
解析上は成立した設計でも、量産ではばらつきが性能を左右します。本章では、試作から量産へ移る段階で問題になりやすい3つの論点を取り上げます。
磁石挿入クリアランスが生む位置ばらつき
磁石孔は、挿入しやすいように磁石よりわずかに大きく作られます。パナソニックの国際公開特許WO2025/154392では、この寸法差の例として0.05〜0.2mm程度を挙げています。そのうえで、磁石が孔の中で周方向の左右どちらに寄るかがランダムになる点を課題としています。左右の寄りが混在すると、磁気回路の回転対称性が崩れ、コギングトルクが増えるおそれがあります。
同特許の解決策は、磁極間の貫通孔を左右非対称にして磁路の磁気抵抗に差をつけ、隣接磁石からの反発力で全磁石を同じ側へ寄せるというものです。公差を「なくす」のではなく「ばらつく向きをそろえる」という発想は、量産設計で応用しやすい考え方です。
組立後着磁という選択肢
着磁済みの磁石をスポーク状に組み込む作業では、隣接磁石間の強い吸引・反発力に逆らう必要があります。作業性と安全性の両面から、未着磁の磁石を組み込んでからロータごと着磁する組立後着磁が検討されています。10極のフェライト・スポークロータを対象に、着磁率99%以上を狙った着磁ヨークの設計研究も報告されています。
組立後着磁を検討するときは、少なくとも次の点を確認しておく必要があります。
- 着磁電源のコンデンサ容量とピーク電流
- 着磁ヨーク自体の磁気飽和
- 着磁対象でない隣接磁石の不可逆減磁
- 着磁後の磁束分布を検査する方法
着磁は設備側の問題として後回しにせず、ロータ設計と同時に検討することで、量産立ち上げ時の手戻りを防げます。
磁石・ハブ接合部の熱抵抗
分割構造や樹脂モールドを採用すると、磁石から外部への熱の経路に、接着層、樹脂、微小なすき間といった熱抵抗が加わります。ロータ内部の温度は直接測りにくいため、熱設計は解析に頼りがちです。
熱伝導率の高い接着剤を選ぶだけでは、電気絶縁、熱膨張差、硬化収縮との兼ね合いを見落とします。接合面の熱抵抗を実測し、電磁・構造・熱の連成解析に反映できるかが、設計の信頼性を左右します。
| 電磁・構造・熱をまたぐ設計検討を補強したい方へスポーク型の設計では、磁界解析、強度解析、熱解析、製造公差の検討が互いに影響し合います。これらを特定の担当者が抱え込むと、設計レビューが止まりやすくなります。社内に残すべき設計判断を整理したうえで、解析や設計検討の一部をモータ設計の経験を持つエンジニアで補う進め方もあります。月20時間程度からの参画も含め、必要な専門性と業務範囲の整理からご相談いただけます。▶ エンジニア採用・紹介サービスの詳細を見る |
実用化はどこまで進んでいるか
研究成果の多さと、製品への普及度は別の話です。本章では、公開情報から確認できる到達点と、確認できない部分を分けて整理します。
260kW級フェライト重車両試作の到達点
スウェーデンのウプサラ大学を中心とする研究グループは、2025年12月に大型車両向けフェライト・スポーク機の設計と実機検証を論文で発表しました。ピーク出力は260kWで、高速化よりも高トルクを優先した設計です。既存の希土類モータを置き換える前提でロータを最適化し、磁石を大型化することで減磁に強い高トルク機を実現したとしています。
小型機の研究段階を超え、商用車クラスの出力でもフェライト・スポーク型が成立し得ることを実機で示した点に意味があります。
特許の焦点の変化:磁石保持から公差制御へ
国内メーカーの特許を並べると、技術課題の移り変わりが見えてきます。
| 特許 | 出願人 | 主な課題 | 解決の考え方 |
|---|---|---|---|
| WO2019/065119(2019年公開) | 日本電産(現ニデック) | 遠心力による磁石の飛散と振動 | 飛散防止部と切欠きで、保持強度と低振動を両立 |
| WO2025/154392(2025年公開) | パナソニックIPマネジメント | 挿入クリアランスによる磁石の位置ばらつきとコギング | 非対称な貫通孔で、磁石の寄る向きをそろえる |
米国でも、積層鋼板の一部を弾性変形させて磁石を挟み込み、接着剤に頼らず保持する構造の特許が登録されています。課題が「壊れないこと」から「ばらつかないこと」へ移っている点は、スポーク型が量産段階の課題に向き合い始めたことを示しています。
市場規模データが存在しない理由
スポーク型PMモータだけを切り出した市場規模や出荷台数の統計は、公開情報からは確認できません。理由は2つあります。1つは、市場統計がPMSMやIPMモータの単位で集計され、ロータ構造で区別されていないことです。もう1つは、メーカーのカタログがロータの内部構造を公開しないことが多い点です。
そのため、PMSM全体の市場規模からスポーク型の規模を推計した数値は、根拠として使うべきではありません。研究試作と特許は豊富にある一方、量産普及の度合いは一次情報からは判定できない。これが現時点での正確な評価です。
スポーク型の採用を検討すべき用途の判断軸
スポーク型が向くかどうかは、用途の条件で大きく変わります。公開されている研究・特許の用途例とあわせて整理すると、次のとおりです。
| 用途の条件 | スポーク型との相性 | 注意点 | 公開情報での用途例 |
|---|---|---|---|
| 希土類磁石の使用量を減らしたい | 向く:フェライトでもトルクを確保しやすい | 低温減磁、体格の増加 | 大型車両の駆動、半導体製造装置のポンプ |
| 外径の制約が厳しく、低中速で高トルクが必要 | 向く:磁束集中で空隙磁束を上げられる | 磁極飽和、トルクリップル | ダイレクトドライブ、洗濯機 |
| 振動・騒音の要求が厳しい | 条件付き:高調波対策が前提 | 径方向電磁力の次数管理 | 変速機用アクチュエータ、ドローン、電動アシスト自転車 |
| 最高回転数が高く、弱め界磁の運転が長い | 慎重な検討が必要 | ブリッジ強度、弱め界磁時の減磁 | 研究段階の提案が中心 |
自社製品で検討する際は、まず最高回転数、使用温度範囲、故障時の電流条件を整理し、どの行に当てはまるかを確認するところから始めると判断がぶれにくくなります。
今後の技術ロードマップ
最後に、公開されている研究動向から、スポーク型の技術がどの方向に進むかを時間軸で整理します。ここでの見通しは、論文と特許の傾向から導いた本記事の見解です。
短期:既存ラインを活かしたロータ高度化
今後数年は、既存のステータや積層工程を維持したまま、ロータだけを改良する動きが中心になると見ています。具体的には、ブリッジ形状の最適化、非磁性支持体の改良、組立後着磁、公差を前提にした設計、ロータの溝やスキューによる振動低減です。2026年には、半導体プロセス用ポンプ向けに、スキュー構造と組立後着磁を一体で設計・検証したフェライト・スポークモータの研究も報告されています。
設備投資を抑えながら性能を引き上げられるため、中堅規模のモータメーカーでも取り組みやすい領域です。
中期:可変磁束とハイブリッド磁石
2030年代に向けては、磁束を運転状態に応じて変える技術と、磁石材料の組み合わせが焦点になると考えます。スポーク型は低速高トルクに強い反面、磁石磁束が大きいため、高速域では誘起電圧が制約になります。漏れ磁束を運転状態に応じて変化させる可変漏れ磁束型の構造は、この弱点を補う方向の研究です。
材料面では、フェライトを主な磁束源とし、少量のネオジム磁石で動作点を補うハイブリッド構成が検討されています。韓国の大学の研究では、磁石を傾けて配置し、希土類磁石をフェライトより内側に置くことで、希土類の使用量を抑えながらトルク密度を確保する構造が試作検証されています。
長期:AMによる3次元ロータ設計
長期的には、積層造形によって、磁束を通す部分と荷重を受ける部分を3次元的に作り分けられるようになる可能性があります。平面の打抜き形状を重ねる従来の積層では作れない内部リブや空洞を、ロータ内に配置できるためです。
ただし、造形材の磁気特性、表面粗さ、残留応力、品質保証の方法は、まだ確立の途上にあります。量産技術になるまでには、材料と検査の両面で時間がかかると見るのが現実的です。
まとめ:競争力を決めるのは多物理の統合設計力
スポーク型PMモータは、磁束集中によってBrの低い磁石でもトルクを確保できる、希土類低減の有力な選択肢です。一方で、その性能は磁石形状だけでは決まりません。保持ブリッジと漏れ磁束、フェライトの低温減磁、磁石位置のばらつき、着磁工程、熱経路を同時に満たせるかどうかが、製品としての競争力を決めます。
検討を始める際は、まず用途の最高回転数と故障時の条件を整理し、候補とするロータ構造を絞り込むことが出発点になります。そのうえで、構造案の比較や連成解析のように一時的に負荷が高まる工程は、社内の設計判断を残したまま、作業の一部を外部に切り出す方法も選択肢になります。
| 解析・設計検討の工数を一時的に補いたい方へ構造案の比較、磁界解析や強度解析、図面化など、設計業務の一部を切り出して任せることができます。設計の判断軸は社内に残しつつ、検討のスピードを上げたい場合にご活用ください。▶ 設計業務の巻き取りサービスを見る |
参考資料
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4.Fatemi, A., Ionel, D. M., Popescu, M., Demerdash, N. A. O.: Design Optimization of Spoke-Type PM Motors for Formula E Racing Cars, IEEE ECCE, 2016
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