中小製造業が3DCAD導入で失敗する3つの原因と、定着までの8ステップ
「2DCADのままでは手戻りが減らない」「取引先から3Dデータを求められた」。
そうした状況から3DCADへの移行を検討する製造業は少なくありません。ただし導入しても、社内で使いこなせず、期待した効果が出ないことがあります。要因は個々の設計者の努力ではなく、習得の進め方や社内ルールの整え方にあります。
そこで本記事では、2DCADとの違いに加え、3DCADの導入が失敗する原因と定着させる手順を解説します。
3DCADと2DCADとの違い
はじめに、2DCADと3DCADの違いを整理します。どちらも図面を作るツールに見えますが、設計情報の持ち方や後工程での使われ方が異なります。導入判断の前提になる部分のため、実務で何が変わるかを先に押さえましょう。
| 項目 | 2DCAD | 3DCAD |
| 設計情報の持ち方 | 線と寸法で平面上に表現する | 部品形状を立体データとして保持する |
| 干渉・組み付けの確認 | 図面を見ながら頭の中で照合する | 組立モデル上で干渉を検出する |
| 後工程への展開 | 図面をもとに個別に作成し直す | 解析・CAM・技術資料へデータを流用する |
| 設計変更の反映 | 関連する図面を個別に修正する | モデルの修正が関連図面へ反映される |
| 習得の負荷 | 既存の作図知識で運用できる | モデリング手順などを習得する |
両者の大きな違いは、直接図面を描くのか、部品の形状データを元に作るのかという点です。2DCADでは、用途ごとに図面や資料を個別に作ります。3DCADは、モデルを1つ作れば図面作成や干渉確認、解析、CAMへの受け渡しと、複数の用途に活用できます。
ただし、用途が広いことと、実際に導入効果を得られるかは別の問題です。そのため3DCADを導入する際は、自社がどの用途で改善を図りたいのかを整理することから始めます。
製造業で3DCAD導入が求められる理由
3DCAD導入の検討が始まる背景には、社内の設計品質の問題と、取引先からの要請があります。どちらが起点かで、着手する範囲と期限の決まり方は変わります。
2D運用のままでは手戻りが減らない
3DCADが求められる理由の一つは、2D運用では防ぎにくい手戻りを、設計段階で見つけやすいためです。2Dでは立体形状の整合を担当者が頭の中で照合するため、確認の精度が個人の力量に左右されます。
装置類や設備は、構成される部品点数が多く、すべての取り合いを2D図面上で確認しきるのは容易ではありません。たとえば、可動部や配線・配管の干渉は、試作組立の段階になってはじめて表面化しがちです。
その点、3DCADは組立モデル上で干渉を検出できるため、取り合いの確認が担当者の力量に依存しにくくなります。出図前の検出を増やせれば手直しは最小限で収まり、出図後の再設計や現物合わせの調整も減らせます。
取引先から3Dデータでの納品を求められる
取引先から継続的に3Dデータを求められる場合、3DCADの導入が現実的な選択肢になります。外注で3D化しても社内の設計データが2Dのままでは、設計変更のたびに二重の管理が発生するためです。
具体的には、変更のたびに2D図面を直し、渡した3Dデータも作り直すことになります。更新が漏れれば、先方が持つデータと最新の図面が食い違います。設計を3Dで進めれば、モデルが元データになり、この二重管理はなくなります。
要請が単発であれば、その都度3D化を外注する対応でも足ります。
製造業で3DCAD導入が失敗する原因
3DCADを導入しても、2D運用に戻ってしまう例は少なくありません。原因は操作の難しさだけではなく、業務の組み立て方と運用ルールにもあります。ここでは、定着を妨げやすい要因を整理します。
3DCADの操作方法を覚えきれない
操作を覚えきれず、使うことに抵抗が残ると3DCAD運用は定着しません。手順に迷いながら作業すると2Dより時間がかかり、3Dにした利点を実感できないためです。その実感に至る前に習得が止まりやすいのは、次のような状況です。
- 繁忙期を見越した習得計画になっていない
- 演習の題材が自社製品に結びつかない
- つまずいたときに聞ける相手が社内にいない
逆に、2Dよりも効率的であることを実感できれば、設計者は自ら3DCADを使うようになるでしょう。納期が迫れば、作業に慣れた2Dへ戻る判断は合理的といえます。抵抗がなくなるまで練習量を実務外で確保できるかが、定着の分かれ目です。
3Dを前提にした業務フローを組めない
3DCADを導入しても、レビューや後工程のやり方が2Dのままなら、設計者の負担はむしろ増えます。モデルを作る手間が加わる一方で、3D化の効果は形状データが後工程で使われて初めて現れるためです。
3DCADでは、部品のモデルを組み合わせて組立状態を再現できます。部品同士がぶつかる箇所や組めない箇所を立体的に確認できるため、2D図面でのレビューよりも設計ミスを見つけやすくなります。しかし、部品単品の3Dモデルを作るところで止めてしまうと、この確認ができず、組立不具合の発生数はさほど減りません。
3D運用を前提とした業務フローを先に組めるかが、導入の成否を分けます。組立状態の確認など、3Dモデルを使う場面をまず一つ決めるところから始めるのがよいでしょう。
データ作成の運用ルールを整備できない
単に3DCADを導入しただけでは、属人化は解消されません。3Dモデリングの手順は自由度が高く、運用ルールを決めないまま使い始めると、履歴の組み方や部品構成の分け方が担当者ごとに変わるためです。
他設計者のモデリング方法を追えないと、寸法を変えたときに形状が崩れ、結局作り直すことになりかねません。そこで、導入時に決めておきたい項目と、未整備のまま進めた場合に起きることを整理しました。
| 決めておく項目 | 未整備のまま進めると起きること |
| ファイルの保管場所と、ファイル名の変更・移動の扱い | 参照が切れ、モデルや図面を開けなくなる恐れ |
| モデリング手順の標準化 | 設計者ごとに手順が異なり、データの再利用が進まない恐れ |
| ねじなどの購入品をどこまでモデル化するか | 同じ部品が重複して作られ、データ量だけが増える恐れ |
すべてを最初から作り込む必要はありません。運用しながら追記する前提で、迷いが生まれやすい項目から決めていけば、属人化を抑えられます。
失敗しない3DCAD導入の進め方
ここからは、失敗しない3DCAD導入の進め方を、8つのステップに分けて解説します。導入前の準備から、社内へ展開したあとの運用までの流れをまとめました。
STEP1:3D化で防げた手戻りを洗い出す
最初に行うのは、過去に起きた手戻りの洗い出しです。発生した設計不具合などを挙げ、3DCADで設計していれば防げたか、どれだけ工数がかかったかで振り分けます。3D化しても減らない問題まで対象に含めると、効果が出ないまま工数だけが増えるためです。
たとえば、3Dモデル上で組立状態を確認すれば、部品同士の干渉に出図前に気づきやすくなり、組立時の現物合わせを減らせる可能性があります。洗い出した中から、3D化で減らせる手戻りが多かった製品や工程を、今後3Dで設計する候補に選びます。
STEP2:少人数の推進役を決める
次に決めるのは、導入を進める推進役です。まずは数名に絞り、習得と検証に使う業務時間を確保します。全員で同時に始めると一人あたりの練習量が不足し、誰も実務レベルに届かないまま時間が過ぎるためです。
推進役を選ぶ際は、次の点を目安にします。
- 対象製品の設計を理解している
- 設計から納品までの流れを把握している
- 判断根拠を書き残すことを面倒がらない
- 他の設計者に教えることを苦にしない
- 一定期間、習得にあてる時間を確保できる
これら5つすべてを満たす人が見つかるとは限りません。特に時間の確保は、候補者本人だけの問題ではないため、管理職による業務配分の調整も視野に入れる必要があります。
STEP3:評価版で自社製品の3Dモデルを作ってから選定する
3DCADソフトを選定する際は、実際に試してみることをおすすめします。仕様や機能の比較だけでは、自社製品に適しているかどうかまでは判断できないからです。選定の段階では評価版の活用が有効で、正式購入前でも手を動かして確かめられます。
試す題材は、選んだ対象のうち、部品点数が多いユニットや形状が複雑な部品です。あわせて、取引先とやり取りするデータ形式を問題なく読み書きできるかも確認します。
STEP4:推進役に集中的に3DCADを習得させる
推進役は、期間を区切って集中的な習得に努めます。日常業務の合間に少しずつ触る形では、操作が定着しにくいためです。
初めの段階では、CADベンダーが提供するチュートリアルや、市販の参考書に掲載された演習が効果的です。手順の解説が付いており、つまずいても自力で進められるためです。一通り終えたら、自社製品を題材にした練習へ移ります。
STEP5:最低限必要な、3Dデータの管理ルールを作る
推進役が3DCADを使いながら、最低限の管理ルールを作ります。優先度が高いのは、ファイルの命名と保管のルールです。3DCADでは部品・組立・図面が別ファイルで関連づくため、後から名前を変えたり移動したりすると参照が切れることがあります。
図枠や表題欄の様式は、従来の2D図面から引き継げます。ここまでの範囲を決めておけば、後々3DCADを扱う人が増えても、参照切れなどのトラブルを避けられるでしょう。
STEP6:推進役から他の設計者へ展開する
推進役の3DCAD習得が進んだら、他の設計者へ広げていきます。このとき伝えるのは操作方法だけではありません。ファイルの保管場所や命名の決まりなど、先に整えた管理ルールもあわせて共有します。3Dデータは複数の部門で共有して使われるため、単に操作を覚えただけでは不十分です。
STEP7:新規案件から3Dで設計を始める
一定の人数が操作を習得できたら、新規案件から3Dでの設計に移ります。新規案件であれば、通常の設計業務と3Dへの移行を並行して進められるためです。
案件を進めながら、組立状態での干渉確認といった3Dの利点も確かめられます。案件をこなすごとに3Dデータが増え、次の設計で流用できる範囲も広がっていきます。
STEP8:運用しながら管理ルールを改訂する
運用を始めたら、決めておいた管理ルールを実務に合わせて更新していきます。使い始めると、想定していなかった判断が次々と出てくるためです。
更新のきっかけとして拾いたいのは、同じ質問が繰り返し出た場面と、担当者によって扱いが分かれた場面です。ただ、そのたびに文書を直す時間を取るのは簡単ではありません。負担を下げるためには、ルール見直しの場を定期的に設け、まとめて反映するとよいでしょう。
3DCAD導入で外部支援が有効な場面
ここまでの進め方は、社内に3D設計の経験者がいれば自力でも進められます。一方で、判断材料や人手が足りず、着手の段階で止まることもあります。そうした場合に、外部からの支援が選択肢になります。
導入の判断や選定を社内ではできない場合
3DCADの評価版を試そうにも何を確認すればよいか分からない場合は、評価観点づくりから外部に相談できます。3DCADを扱った経験がなければ、自社製品のどこを試せば判断できるのかを見極めるのは難しいためです。
ここで、社内で決めることと外部に相談しやすい内容を整理します。
| 社内で決めること | 外部に相談しやすいこと |
| 3D化する対象製品と優先順位 | 自社製品に照らした評価観点の整理 |
| 推進役の人選と業務調整 | 必要な機能と不要な機能の切り分け |
| 導入時期と予算の判断 | 評価版で確認する項目の試し方 |
対象範囲や時期は社内で判断し、外部人材は確認すべき項目を提案します。この線引きを先に決めておくと、相談もしやすくなります。
推進役を任せられる人材がいない場合
推進役に適した人材が見つからない場合は、外部の設計経験者に伴走を依頼できます。3DCAD習得の段階で必要になるのは操作の説明ではなく、自社製品をどう作るかという判断だからです。この判断は、設計から納品までの工程を経験していないと示しにくい部分です。
ただし外部は判断を後押しする役割で、推進役は社内に置きます。社内に判断が残らないと、支援が終わった時点で運用も止まります。外部へ依頼する際は、任せる範囲や機密情報の扱いも先に決めておきたいところです。
こうした論点は、製造業の人手不足を救う外部人材とは?の記事で整理しています。あわせてご覧ください。
流用部品の3D化が新規案件に追いつかない場合
社内の設計者が新規案件の3D設計に手を取られ、流用部品の3D化まで手が回らない場合は、その作業だけを外注できます。新規案件を3Dで進めても、流用する部品は2D図面しかなく、組立状態で確認するには流用部品の3Dモデル化も必要になるためです。
外注する前に決めておきたいのが、どの部品をどこまで作り込むかという基準です。外形寸法だけで足りる部品と、内部形状まで再現する必要がある部品では、3D化にかかる工数が変わります。どの部品をどこまで作り込むかは、あらかじめ社内で決めておきます。
まとめ|3DCAD導入は少人数で始めて広げる
3DCADの導入がうまくいかない原因は、操作の難しさよりも、業務フローや管理ルールを整えないまま人数を広げることにあります。まずは過去の手戻りのうち3D化で減らせるものを洗い出し、対象を絞るところから始めましょう。
判断の材料づくりや推進役の育成から相談したい場合は、外部の支援も選択肢になります。当社のSOLIDWORKS研修・導入定着支援では、導入前の相談から、自社の図面を題材にした研修までを担当します。社内標準の整備や既存図面の3D化にも対応しています。
どこまでを社内で判断し、どこからを外部に任せるか整理する段階から、お気軽にご相談ください。
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