2台分の工程を1台の市販改造機で実現 — 研削加工専用機の開発支援

実績事例

この実績の担当者

国公立大学機械工学科大学院を卒業後、大手メーカにて機械設計エンジニアとして、自動車分野・農業機械分野を中心に、設計開発・研究開発・プロジェクト推進に携わってきました。SolidWorksを10年、CATIAを2年、AutoCADを3年使用し、機械設計および強度解析に対応可能です。液接設備や搬送装置の設計、治具開発、レイアウト設計に加え、農地用・施設用農薬散布ロボットの開発にも従事してきました。研究開発経験7年、プロジェクトマネジメント経験も有しており、新規開発の立ち上げから推進まで幅広く支援できます。特許12件、学会発表1件、文献11件の実績があります。

角川 俊光

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今回の事例は、計測器メーカー向け精密部品の研削加工における設備見直しを担った設計・開発支援です。既存設備の組み合わせでは歩留まりや安全性に課題があり、代わりとなる専用機の構築が求められていました。

機械系エンジニアは、市販の簡易卓上研削装置をもとに、専用機の設計・製作を担当しました。2種類の設備を組み合わせていた工程を1台で完結できる構成へと再構築し、加工品質の安定化と作業負荷の軽減を両立しています。市販機を専用機に改造する進め方によって、低コスト・短期間での装置立ち上げを実現しました。

目次

1. 支援先企業の概要

項目内容
業種精密機械加工
規模社員数 約30名
地域関東地方
販売形態BtoB
主な顧客大手計測器メーカー

当該企業は、大手計測器メーカーを主な顧客とする精密機械加工を手がけています。今回の対象部品の研削加工は、2種類の既存設備を併用して対応していました。

2. 支援前の状況と課題

当該企業が抱えていた課題は、生産性と作業安全性の2つの側面にわたります。

既存設備の組み合わせで生じる歩留まりの悪化

当該企業は、既存設備を組み合わせる形で対象部品の研削加工にチャレンジしていました。しかし、加工時間の増加や品質の不安定、工程数の増加による歩留まりの悪化に対し、根本的な解決策を見いだせていない状況でした。

加工時の安全性確保が困難な状況

既存設備での加工では、安全性が十分に確保できていない状態が続いていました。品質面の課題に加え、安全性の不足は作業者の心理的な負担にもつながっていたのです。

3. 実施した設計・開発支援

機械系エンジニアが行った提案は、市販機に改造を加えた専用機での研削加工対応です。ベース機の調査・選定から専用機の設計・製作まで、段階的に進めました。

改造のベース機に使える市販機の調査・選定

設備調達コストを抑える観点から、改造のベース機に使える市販装置の調査を実施しました。

低コストかつ入手性の高い装置に着目し、ECサイトで購入できる「簡易卓上研削装置」を候補として選定しています。コンパクトであり、小型部品の研削用途に適した基本構造をもつ点が評価ポイントです。

実機評価による改造項目の抽出

選定した「簡易卓上研削装置」の性能を見極めるため、実機評価を実施しました。

評価の結果、モーター出力が不足しており、対象部品の実加工には性能が不十分と判明しています。そのため、市販装置は改造を前提とした代替機として位置づけました。抽出した改造項目はモーター出力の強化と駆動系の見直しであり、改造方針として整理しています。

抽出した改造項目に基づく設計

抽出した改造項目に基づき、専用機の設計を進めました。

まず、追加するモーターやプーリを適切に組み付けるためのベース構造を設計しています。干渉や剛性、メンテナンス性を考慮したレイアウト検討を行いました。あわせて、必要な回転数とトルクを満たすよう、モーターと伝達部品を選定し、仕様の妥当性も検証しています。

設計に基づいた製作

設計が固まった段階で、専用機の製作に着手しました。

選定したACモーターを組み付け、簡易的な配線作業を行ったうえで、実機として動作する状態まで構築しています。配線の保護と安全性確保の観点からは、3Dプリンタを用いて専用の配線ボックスを設計・製作し、装置に組み込みました。

これらの対応により、市販の低コスト装置をベースとしながらも、実加工に耐える性能と運用を見据えた専用の構成を確立できたのです。

このように、対応方針の提案からベース機の選定、改造項目の抽出、専用機の設計・製作までを一貫して担当しました。

4. 専用機の設計・開発を進めるうえで工夫したこと

同エンジニアは、限られた予算・期間の中で実用性を確保する進め方を意識しました。

市販装置をベースとし、開発期間とコストを圧縮

ゼロから専用機を新規開発する場合、設計・製作工程の積み上げによって、開発期間とコストは大きく膨らみがちです。

そのため同エンジニアは、市販装置をベースとして流用し、性能向上に必要な改造を最小限にとどめる進め方を採用しました。

この方針で進めることで、ゼロからの新規開発よりも、開発期間とコストを大幅に圧縮できました。

3Dプリンタ活用で開発を効率化

専用機の設計を進める過程では、装置に合わせた専用部品の設計が必要となります。専用部品を外注すると、費用と納期の両面で負担が生じやすい状況です。

そこで同エンジニアは3Dプリンタを活用し、配線保護用の配線ボックスなどの付帯部品を内製化する方針を採用しました。付帯部品の試作から組付けまでを内製で完結できる体制を整えています。

その結果、外部調達の待ち時間を介さずに製作工程を進められるようになり、製作期間の短縮を実現したのです。あわせて、内製化により調達コストを抑えられ、コストダウンにも寄与しました。

対面打合せ重視のコミュニケーション体制

短期間・低コスト下で専用機を実用化するには、関係者間の認識合わせと迅速な意思決定が欠かせません。対応にあたって、要件すり合わせや進行確認は、基本的に対面打合せで実施しました。実機や現場環境を直接確認しながら議論を進めたことで、要求仕様の具体化と課題の早期抽出につなげられたのです。

5. 成果と変化

今回の支援による成果は、設備構成の見直しに伴う運用面の改善と、加工品質の安定化に分けて整理できます。

まず、2種類の設備をまたぐ運用から、単独装置での運用に切り替わりました。設備点数の削減により、省スペース化、段取り作業の簡略化、オペレーション負荷の低減を実現しています。

加えて、装置構成の最適化と駆動系の見直しによって、加工条件のばらつきが低減されました。従来は設備間の条件差や個体差に起因する品質ばらつきが課題でしたが、本装置への集約により再現性の高い加工が可能となっています。

これらの結果として、生産性と品質の両面で改善が進みました。市販機を専用機に改造する進め方が、現場の運用改善と加工品質の安定化に直結する成果として表れたのです。

6. このような企業におすすめ

以以下のような課題を抱える企業には、本支援の活用が有効です。

①専用機の新規導入に予算を割きにくい企業

「限られた予算でも、現場の生産性や品質改善に必要な装置を整えたい」場合に、本支援は適しています。市販機をベースとした改造で必要な機能だけを実装するため、専用機の新規導入と比べて初期費用を大幅に抑制できます。

②スピード重視の装置立ち上げが必要な企業

量産化に先立つ試作・検証段階で、装置の準備期間を最小限にしたい場面には本支援が向いています。3Dプリンタや簡易設備を組み合わせる進め方なら、検証目的の装置を短期間で立ち上げられます。

③既存設備の老朽化・保守切れに悩んでいる企業

メーカーサポートの終了や交換部品の入手難に直面し、既存設備の運用継続が難しくなった状況で本支援は有効です。市販機をベースとした代替機の構築は、無理な延命に代わる現実的な置き換え手段となります。

市販機の改造と内製化を組み合わせる進め方は、ゼロからの装置開発に比べて開発期間とコストを大きく抑える選択肢です。設備改善を検討する場合は、ぜひ一度ご相談ください。

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