「作ってから気づく」を試作前に見える化 — 測定機器の振動解析支援

実績事例

この実績の担当者

大手メーカや中小ベンチャーで機械設計エンジニアとして20年以上、自動車部品・産業機器分野の製品設計開発に従事してきました。SolidWorksを中心とした3DCAD設計に強みを持ち、空気圧縮機やAT/CVT、パワーステアリングユニットなどの開発経験があります。設計だけでなく、強度解析・振動解析、原価低減、FMEA/FTA、特許明細書作成、取扱説明書作成、量産化対応まで幅広く対応可能です。近年はSEOやWebディレクションの経験も有しており、技術と事業の両面から支援できます。オンラインで全国対応可能です。

大城 竜亮

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今回の事例は、「JIS振動試験への対応が要件となった測定機器」の開発における設計・開発支援です。当該企業は、解析・筐体設計・試作・試験までを一貫して任せられる外部技術者を求めていました。機械系エンジニアがこのニーズを受け、各工程を横断して担当しています。

機械系エンジニアは、商用CAEソフトの新規導入を行わずに振動解析を成立させました。解析結果を対策仕様へと反映する流れを設計段階で組み立てたことで、試作回数を抑えた開発を実現しています。「作ってから気づく」から「試作前に見える化する」状態へと切り替え、手戻りの少ない効率的な開発体制を確立しました。

目次

1. 支援先企業の概要

項目内容
業種測定機器の製造・販売
規模社員数 約30名
地域関東地方
販売形態BtoB
主な顧客工場の生産技術部門

当該企業は、工場の生産技術部門を主な顧客として測定機器を手がけています。振動解析を実施できる技術者が社内には在籍しておらず、今回の新製品開発では外部支援の活用が不可欠でした。

2. 支援前の状況と課題

当該企業が抱えていた課題は、大きく3つの側面に整理できます。試作後に顕在化する振動試験のNGリスク、振動解析を担える技術者の不在、そして外注とCAEソフト導入に生じるコスト制約です。

試作後に顕在化する振動試験のNGリスク

開発中の測定機器は、JIS規格に基づく振動試験をクリアする必要がありました。試験でNGとなれば、筐体の再設計から部品の再製作、再組立、再試験まで一連のやり直しが発生します。こうした手戻りは開発コストの増加やスケジュール遅延に直結するため、当該企業にとっては回避したいリスクです。

そのため、共振しやすい周波数帯や振幅が大きくなりやすい部位を試作前に把握しておくことが、手戻りを抑えるうえでの重要な論点となっていました。

社内に振動解析を担える技術者が不在

製品の振動特性を、試作前に見極めるために有効な手段の1つが振動解析です。しかし、当該企業には振動解析を実施できる技術者が在籍していませんでした。

そのため、試作前のリスクを自社で把握することが困難な体制となっていました。

外注・CAEソフト導入のいずれにもコスト制約

商用CAEソフトの新規導入には大きな初期費用がかかるため、解析環境をすぐに整備することは困難です。
加えて、過去に外注した強度解析では、解析費用が高額になりやすく、解析結果を筐体設計へ落とし込むには、別の設計者の確保が必要でした。そのため、外注費とは別に社内の設計工数も発生する構造になっていました。

こうした状況をふまえ、振動解析と筐体設計の両方を一貫して担える技術者の確保が急務となっていたのです。

3. 実施した設計・開発支援

機械系エンジニアが今回実施した支援内容は、以下の3点です。解析にとどまらず、筐体設計、試作対応、振動試験の段取りまでを通しで担当しました。

CAEによる固有値解析・周波数応答解析

導入コストを抑えるため、商用CAEソフトではなく無償で利用できるPrePoMaxを活用しました。PrePoMaxはCalculiXをソルバーとして用い、固有値解析や周波数応答解析に対応できます。

効率的に進めるための工夫として、同エンジニアは2段構えで解析を実施しました。初めに、筐体外枠を中心としたシンプルなモデルで全体傾向を把握し、第2段階で解析モデルの精度を高め詳細解析を行う流れです。

最終的には、規格で指定された周波数範囲における共振点や振幅倍率を確認しました。これらの結果をもとに、板厚アップ、補強追加、締結・支持位置の見直しといった対策案を立案しています。担当者と協議を重ねながら解析を繰り返し、試作仕様として採用できる対策案を固めました。

筐体設計・部品手配・試作対応

対策仕様が固まった後は、手配と組立が可能な状態まで筐体設計を具体化しました。3Dモデルと図面の作成は板金部品や加工部品を中心に進め、当該企業と同じデータ形式でのやり取りが成立するよう整えています。

板金部品では、3DCADのシートメタル機能を用い、曲げR・干渉・穴位置を考慮したモデリングを実施しました。図面化では、曲げ可能な寸法か、穴位置に無理がないか、一般加工で製作できるかを事前に確認しています。

図面作成後はサプライヤへの見積依頼にも対応済みです。購入実績のない部品はサプライヤ調査から着手し、ゴム部品は材質・硬度・使用条件を踏まえて選定しました。さらに、試作機の組立も代行し、以後は当該企業内で再現できるよう組立手順書も整備しています。

振動試験の準備・調整・実施

試作品完成後は、振動試験の実施に向けた準備を行いました。当該企業には必要な振動試験設備がなかったため、外部機関を調査し、過去に利用実績のある公的機関へ依頼しています。試験依頼では、製品概要・試験条件・加振方向・周波数範囲・固定方法・日程・持ち込み品などを整理し、公的機関と詳細を調整しました。

また、試験直前に機器固定用の治具が必要と判明した際には、外部発注では納期が間に合わない状況でした。そこで同エンジニアが所有していた3Dプリンタで、固定治具を急遽製作し、試験日に間に合わせる対応をとっています。

このように、解析・設計だけでなく、試験実施に必要な段取りや当日の対応まで含めて支援しました。

4. 振動解析・設計支援を進めるうえで工夫したこと

機械系エンジニアが意識したのは、CAEを「試作前にリスクを見える化する判断材料」として実用レベルで運用することと、想定外の結果が生じた場面でも担当者と透明に状況を共有する姿勢です。

シンプルなモデルから段階的に精度を高める

CAEでは、最初から複雑な形状で解析すると、メッシュエラーや計算時間の増加につながることがあります。特に板金部品では、曲げRや細部形状によってメッシュが細かくなり、周波数応答解析の計算時間の増加が懸念されます。

同エンジニアはこの課題をふまえ、まず、R部や細かい形状を省略した筐体外枠のシンプルモデルで計算を回し、正常に解析できることを確認しました。そのうえで、部品を段階的に追加しながら実機に近いモデルに近づけていき、解析精度を高めています。

初期段階の解析結果は「最終結果」ではなく「振動上の課題感を把握する一次評価」と位置づけ、担当者と共有しました。その結果、早い段階で方向性についての認識をそろえ、対策の検討を前倒しで進めることができたのです。

CAEと実験の違いを前提に、判断材料としてCAEを使う

CAEの解析結果は、組立状態、締結部の剛性、接触状態、減衰などの影響により、実測結果と完全には一致しないことが多々あります。周波数応答解析では減衰率の設定が結果を大きく左右しますが、減衰率は実機の構造や締結状態、接触部の状態によって変動するため、事前に正確な値を置くことが難しい項目です。

そこで同エンジニアは、CAEを「正解を出す道具」ではなく「試作前に振動リスクを把握し、対策要否を判断するための材料」として位置づけて解析を進めました。今回の案件でも、固有値解析で得られた固有振動数と実測した共振点は完全には一致しなかったものの、おおむね同じ周波数帯に傾向が出ていることが確認できています。

この運用により必要十分な精度でCAEを活用でき、試作前にリスクを把握し、手戻りを減らすための判断材料を得るという、本来の目的に沿った成果が得られたのです。実機試験の完了後には、試験結果をもとに減衰率を見直し、以降の解析へフィードバックしていく方針も担当者と共有しています。

よくない結果ほど早く共有する

初回の周波数応答解析で振幅が想定より小さい結果となり、一次結果として担当者に報告しました。その後、解析条件を点検したところ、単位設定にmとmmのオーダー違いがあったことが判明します。設定ミスの原因は機械系エンジニア側にありました。同エンジニアはこのミスを隠さず、判明した時点で担当者へ状況を共有し、ただちに再解析を実施しています。正しい条件での結果を改めて報告することで、その後の意思決定への影響を最小限にとどめました。
結果として、誤りを早期に開示して速やかに修正した姿勢そのものが、担当者からの信頼につながったのです。

5. 成果と変化

今回の支援による成果は、試作前のリスク把握から対策、そして社内ノウハウの蓄積まで多岐にわたります。

まず、試作前にCAEで振動リスクを見える化したことで、試作後の試験まで分からなかった課題を設計段階で数値評価できるようになりました。試作前に対策を織り込めるため、試作品の作り直しリスクを抑えた開発サイクルが成立しています。

さらに試作前の対策によって、振動試験を繰り返す必要がなくなり、再試験工数の追加を回避できました。解析結果と試験結果は報告書として体系化し、今後の開発ノウハウとして社内に蓄積しています。

6. このような企業におすすめ

以下のような課題を抱える企業には、本支援の活用が有効です。

  • 振動問題への取り組み方が分からない
  • 社内にCAE解析を担える技術者がいない
  • 試作前に振動リスクを把握したい
  • 解析から設計・試作・試験まで一貫して相談したい
  • CAEソフトの導入コストを抑えつつ振動解析を実施したい

振動問題は、試作や実機試験で初めて顕在化することが少なくありません。しかし試作後に発覚すると、設計変更・再製作・再試験が連鎖し、開発コストと期間の双方が大きく膨らみます

CAEを「試作前に共振リスクを見える化する手段」として位置づければ、対策の検討を設計段階へ前倒しできます。試作前に設計リスクを減らしたい企業は、ぜひ一度ご相談ください。

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